第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S12] シンポジウム12
海外拠点からの報告:感染症研究の最前線

2022年3月31日(木) 16:00 〜 18:30 チャンネル4

コンビーナー:山崎 伸二(大阪府立大学),藤永 由佳子(金沢大学)

共催:国立研究開発法人日本医療研究開発機構

[S12-2] タイ研究拠点を活用した急性下痢症に関する共同研究の展開

岡田 和久 (阪大・微研・日タイ感染症)

タイ王国は東南アジアにおける我が国の生産拠点として重要な役割を演じており,日タイ間の人や物の交流はきわめて盛んである.一方でタイは熱帯に位置し,他の熱帯諸国と同様に様々な感染症が人々を悩ませており,従って感染症研究の最前線でもある.大阪大学微生物病研究所はタイ王国とは60年以上にわたる共同研究の歴史が連綿とある.2005年にはタイ保健省医科学局と文部科学省の協力支援を受けてタイ国立予防衛生研究所内に大阪大学タイ拠点「Research Collaboration Center on Emerging and Re-emerging Infections」を設置している.日本人研究者が海外に赴き,現地の研究者との間にこれまで以上に密接な連携をはかり,長期的展望に立った体制を確立し,研究を行う事を特徴としている.新興・再興感染症の出現時には防疫上必要な情報の発信,治療薬やワクチン開発などのさまざまな対策が迅速に行える体制を目指している. 本演題では,タイ拠点を活用した下痢症研究について紹介する.タイでは下痢症の蔓延がみられるが,病因論的な解析はなお不十分な状況にあるため,タイ国内における急性下痢による入院患者を対象に,原因微生物の特定を試みた.また,多くの不顕性感染者が認められたことから,健常者ボランティアの追跡調査も実施している.更に急性下痢症の病因論の理解を深めるため,タイ国内の下痢症アウトブレイク調査にも着手している.これまで得られた下痢症研究の成果と今後の展開について報告する.併せて,阪大タイ拠点で行われているその他の研究の概要についても紹介したい.