[S2-4] Molecular mechanisms of surface protein translocation for sustainable bacterial growing
グラム陰性細菌は内膜,外膜の2枚の生体膜と細胞壁からなる表層をもつ.外膜には,8本以上のβストランドが樽状構造を形成するという特徴的な膜貫通領域を持つタンパク質が存在する.これらは,栄養老廃物の輸送(生育),宿主との接着や,毒素の放出(感染),透過障壁の堅牢性維持(防御)といった外界と関わる全ての生命現象に重要な役割を担っている.これらが機能を発揮するためには,正しい立体構造形成を伴った外膜への組込み(アセンブリー)が必要である.アセンブリーはグラム陰性菌では,Beta-barrel Assembly Machinery(BAM)複合体が行う.BAM複合体は,それ自体がβバレル型膜タンパク質であるBamAと,BamB, C, D, Eのリポタンパク質の計5つのサブユニットからなる複合体である.BAM複合体は,近年その立体構造が複数報告され,さらにはBAM複合体を標的とした抗菌薬が単離されている.しかしながら,BAM複合体が実際にβバレル型膜タンパク質をどのようにアセンブリーするかという基本的な分子機構については不明な点が多い.我々は,大腸菌から簡便に単離した膜画分を用いた,βバレル型膜タンパク質アセンブリー再構築実験系,EMMアセンブリーアッセイを開発した.この手法は,放射性ラベルしたβバレル型膜タンパク質の単離膜へ取り込ませることで,高い時間分解能でアセンブリーを追跡できる.この手法を用いて,BAM複合体が基質の特定の部位を認識し,素早くアセンブリーを実現していることを見出した.さらには,この反応は外膜の堅牢性にも重要である事を明らかにしている.