第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S3] シンポジウム3
ゲノム解析が拓くファージ研究の新展開

2022年3月29日(火) 09:15 〜 11:45 チャンネル4

コンビーナー:常田 聡(早稲田大学),岩野 英知(酪農学園大学)

共催:日本ファージセラピー研究会

[S3-2] Bacillus cereusグループの広宿主域Jumboファージのゲノム構造と感染機構

土居 克実 (九大院・農・微生物遺伝子)

ゲノムサイズが200 kbp以上のファージはJumboファージと呼ばれ,一般的なファージよりも粒子が大きい.Jumboファージの分離例は,2021年現在224種だが,グラム陽性菌を宿主とするものは9種しか報告例がなく,その内6種はBacillus属を宿主としている.また,Jumboファージは,宿主のものとは異なる独自のDNA,RNAポリメラーゼを持つものもあり,宿主への依存性を低下できる.このため宿主域が広がり,水平伝播などで外来遺伝子を取り込む機会が増えると推測される.さらに,いくつかのJumboファージでは,小ゲノムサイズのファージにはない宿主認識やDNAの包込みに機能すると考えられる構造や,宿主の制限修飾系やCRISPR/Cas等の免疫から回避する構造も報告されている等,興味深い特徴を有する.そこで我々は,Bacillus cereus HT18株を宿主とし,森林土壌からvB_BceM_ WH1を分離した.本ファージは,直径約100 nmの正二十面体の頭部,約300 nmの収縮性尾部を持ち,Myooviridae科に分類されるJumboファージであった.vB_BceM_WH1はB. thuringiensisB. mycoidesなどB. cereusグループの株に感染し,広い宿主域を示した.ゲノム解析の結果,vB_BceM_WH1ゲノムは229,829 bpで300個のORFが推定された.溶菌液から超遠心分離法によりファージ画分と推定されるバンドを回収し,ESI-MS解析を行ったところ,ファージタンパク質と共に,宿主の鞭毛構成タンパク質Flagellinが多量に検出された.この事から,Flagellinが本ファージのレセプターと推測し,大腸菌で発現させた組換えFlagellinとファージタンパク質の相互作用を検討し,他のB. cereusグループ株のFlagellinとの構造を比較し‍た.