[S3-6] BigD Region is Involved in Trade-off between the Phage and Antibiotics Sensitivity in P. aeruginosa
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は,薬剤耐性を顕著に獲得しているESKAPEの一つである.また,WHOは “The critical priority pathogens for developing new antibiotics”としてリストアップしている.これらの背景から,細菌だけに感染し殺菌するウイルス“バクテリオファージ(ファージ)”によるファージセラピーへの期待が格段に高まっている.一方で細菌は抗菌薬に耐性化したように,ファージに対しても耐性化してしまう.そこで私たちは,ファージ耐性菌発生の抑止策とファージと既存の抗菌薬の効果的な併用策について検討している.最新の成果では,ファージに耐性化することでP. aeruginosaが失う性質に着目することで,ファージに耐性化しても抗菌薬感受性が回復するメカニズムを見出すことができた.特に,ファージ感染においてP. aeruginosaが大規模に欠失する染色体配列をBacteriophage-induced galU Deficiency(BigD)領域と名付け, BigD領域がどの様な遺伝子によって構成されるか知ることで,ファージ耐性菌を効果的に制御し得る糸口を見出した.例えば,BigD領域に薬剤排出ポンプ(MexXY)をコードする遺伝子が存在する場合に,MexXYの基質であるキノロン系抗菌薬の感受性がファージ耐性化に伴って回復した.本シンポジウムでは,BigD領域を鍵としたファージと抗菌薬感受性のトレードオフ,すなわちファージセラピーでファージ耐性菌が出現しても,本来感受性が低かった抗菌薬を再び用いることで効果的に細菌性感染症を制御できる可能性,について議論し,あわせてファージ耐性菌そのものを抑止する上で大切な”ファージカクテル”の構築についても最新のデータを基に議論したい.