第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S8] シンポジウム8
抗体医薬を用いた感染制御戦略

2022年3月31日(木) 09:15 〜 11:45 チャンネル3

コンビーナー:松村 拓大(金沢大学),小田 真隆(京都薬科大学)

[S8-2] 血清療法による感染症治療例の紹介

一二三 亨1,大谷 典生1,黒田 泰弘2,岡崎 智哉2 (1聖路加国際病院・救急部・救命救急センター,2香川大・救命救急センター)

近年,Clostridium属による四肢にガスを伴った筋肉の壊死を伴う古典的ないわゆるガス壊疽の頻度は低下した.その一方で,非Clostridium属によるガス壊疽の頻度は高齢化や糖尿病などの併存症との関連で増加している.そのため,主にClostridium perfringens(C. ‍perfringens Type A, Clostridium septicum, and Clostridium oedematiens)に対して製造されたガス壊疽抗毒素のガス壊疽に対する使用の頻度は低下している.古典的ガス壊疽とは異なり,内因性のC. perfringensによる肝膿瘍などの敗血症が増加している.これはClostridium perfringensによるα毒素によって血管内溶血と重症貧血,DIC,多臓器不全を急激に呈して死に至る.Van Bunderen らはこのC. perfringens 敗血症による血管内溶血を来して数時間で死に至る症例を集積して報告し,その死亡率は80%を超えると報告している.抗菌薬投与と感染巣のドレナージは治療の大原則ではあるが,それに加えて Clostridium perfringensに対するガス壊疽抗毒素の投与がその病態から検討され始めている.我々は動物モデルを確立した上でその効果を証明した.さらに,世界で初めてC. perfringens 敗血症患者に対してガス壊疽抗毒素し,良好な経過を経た経験を得たのでその詳細を報告するとともに,様々な感染症に対する血清療法について紹介する.