第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W10] ワークショップ10
選抜ワークショップ5:抗菌性物質,薬剤耐性

2022年3月31日(木) 13:05 〜 15:05 チャンネル4

コンビーナー:横田 伸一(札幌医科大学),富田 治芳(群馬大学)

[W10-2/ODP-220] 緑膿菌の薬剤排出ポンプは低濃度マクロライドによる一酸化窒素抵抗性の減弱を抑制する

鈴木 眞1,森田 雄二2,清水 健1 (1千葉大・院医・病原細菌制御学,2明治薬科大・感染制御学)

【目的】緑膿菌は慢性気道感染症の原因菌であり,それらの効果的な治療法として低濃度マクロライド療法が存在する.しかし,近年の研究により緑膿菌には低濃度マクロライド処理によって一酸化窒素(NO)に対する抵抗性が低下しない株が存在することが明らかになった.そこで緑膿菌の低濃度マクロライド処理の効果を減弱させる要因を明らかにすることを試みた.
【方法】緑膿菌標準株であるPAO1株を親株として用いた.薬剤排出ポンプ遺伝子変異株は接合伝達と相同組み換え法により作製した.マクロライドは10 μg/mL エリスロマイシンを用い,NOは100 μM DETA NONOateを用いた.
【結果】緑膿菌が保持する4種類の薬剤排出ポンプ遺伝子をそれぞれ1種類ずつ保持する変異株,および薬剤排出ポンプ遺伝子を全て保持しない変異株を作製し解析を行った.その結果,薬剤排出ポンプ遺伝子を全て欠失した変異株で低濃度マクロライド処理によるNO抵抗性が劇的に減少したことから,低濃度マクロライド効果を減弱させる要因として薬剤排出ポンプの発現が関与していることが明らかになった.次にどの薬剤排出ポンプが低濃度マクロライド効果の減弱に関与しているかを明らかにするために,特定の薬剤排出ポンプ遺伝子を単独で保持する変異株を用いて解析を行った.その結果,mexAB-oprM保持株,およびmexXY, oprM保持株で低濃度マクロライド効果が減弱した.mexEF-oprN保持株,およびmexCD-oprJ保持株では低濃度マクロライド効果は減弱しなかった.これらの結果から薬剤排出ポンプのうちMexAB-OprM,およびMexXY-OprMがマクロライドを菌体外へ排出し,低濃度マクロライドによるNOに対する抵抗性の減弱を抑制することが示唆された.