[W2-3] The relationship between Fusobacterium nucleatum in the oral cavity and colorectal cancer
以前より大腸癌と腸内細菌に関連があるといわれてきており,2010年代になり,Fusobacterium nucleatum(Fn)と大腸癌について関連性があることが報告された.Fnは口腔内常在菌であり,歯周病菌としてほぼすべてのヒトが保有していることが知られている.Fnは大腸癌のほかにも,食道癌や膵癌など様々な癌腫に影響していることも報告されている.Fnは感染した部位の炎症を惹起し,癌遺伝子や癌抑制遺伝子へ影響を及ぼし,癌に対する免疫を回避することなどが発癌を促進している因子と考えられている.我々の研究室では,口腔内と大腸癌のFnの菌株は相同性があるものが検出されていることを報告した.これは大腸癌のFnは口腔内に由来する可能性があることを示している.一方で,大腸癌患者の便のFnは多く,Fnが多い場合は,生命予後が悪化するとの報告もあるため,大腸癌の進行にも深く関連していることが示唆されている.そのため,歯周病の治療を行うことで便中のFnを減少させることができれば,癌の進行を抑制できる可能性がある.そこで,歯周病を行うことによりFnが歯周病治療の前後でどのように変化するか解析したところ,歯周病治療に成功した症例は便中のFnが減少したことを示した.この現象が消化管を介して腸管のFnを減少させたのか,あるいは別の機序でFnが減少したのかは解明できていないが,口腔内のFnが血流を介して大腸のFnに関連しているとの報告があり,口腔と大腸のFnの関連については議論が尽きない.Fnをはじめとした腸内細菌に注目し,大腸癌の予防方法の解明につなげることが今後の研究課題である.