第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W3] ワークショップ3
選抜ワークショップ1:生理,構造,生態

2022年3月30日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル1

コンビーナー:知花 博治(千葉大学),髙井 伸二(北里大学)

[W3-2/ODP-041] 大腸菌が産生する細胞外小胞を介したA群レンサ球菌の増殖抑制

河岸 優,村瀬 一典,相川 知宏,野澤 孝志,中川 一路 (京大院・医・微生物)

細胞外小胞(Extracellular vesicle : EV)は細菌が細胞外へ産生する 20-400 nm の球状の構造体である.放出されたEV は細菌由来分子であるタンパク,脂質,核酸分子(DNA,RNA)等を内包しており,それら分子を宿主へと運ぶ重要なデリバリーシステムの一つとして機能している.また,EV自身もしくは内包分子による宿主への病原性など,細菌の感染戦略の一旦を担っていることも多数報告されている.しかしながら,細菌種間におけるEVの役割については未だ不明な点が多い.
EV およびそこに内包される分子は,異なる菌種間のコミュニケーションに介在し,多種多様な細菌種との共生・競合関係の構築に寄与すると考えられる.そこで本研究では,大腸菌及び,A群レンサ球菌(group A Streptococcus; GAS)の2菌種を用い,異なる細菌間で受け渡しされるEVの機能的な役割を明らかにすることを目的とする.
そこで,大腸菌由来のEVをGASの培養液中へ添加し,添加から4時間までの経時的な増殖変化を生菌数で評価した.その結果,EV未添加群では生菌数が増加しているのに対し,EV添加群では,GASの生菌数は変わらず一定のままであった.この結果から大腸菌由来のEVは異菌種であるGASの増殖を抑制していることが示唆された.現在,増殖抑制メカニズムを明らかにするため,EV添加時におけるGASの複製に関わる遺伝子群について発現変動の解析を進めている.さらに,この増殖抑制は大腸菌由来のEVに内包分子であるタンパク質,核酸分子に起因すると考えられるため,EVに対してショットガンプロテオーム,small RNAシークエンスを行い,EVに内包される細菌由来分子の網羅的な解析と同定を行っている.