第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W3] ワークショップ3
選抜ワークショップ1:生理,構造,生態

2022年3月30日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル1

コンビーナー:知花 博治(千葉大学),髙井 伸二(北里大学)

[W3-5/ODP-064] マグネトソーム蛋白質MamJによるMamK細胞骨格の重合制御

田岡 東1,2,齋藤 拓海1,菊池 洋輔2 (1金沢大・理工,2金沢大・ナノ生命)

マグネトソームは,磁性細菌の細胞内に直鎖状に配置される磁気オルガネラで,地磁気感知のためのセンサーとして働く.マグネトソームの細胞内配置にはMamKとMamJと呼ばれる2つの蛋白質が関わる.MamKは,アクチン様タンパク質であり,マグネトソームを安定な鎖状構造に固定するための細胞骨格を形成する.一方,MamJはMamK結合蛋白質として知られるが,具体的な役割は不明である.本研究では,Magnetospirillum magneticum AMB-1の精製MamKとMamJを用いて,MamK重合にMamJが及ぼす影響を調べた.蛍光標識した単量体MamKを,ATPを含む緩衝液中で重合させ,蛍光顕微鏡で観察したところ,長さが数百um以上に及ぶ繊維やその凝集体が見られた.一方,MamJ存在下では,長い繊維や凝集体はほとんど観察されなかった.次に,高速原子間力顕微鏡を用いて,MamJ存在下でマイカ基板上に重合したMamK繊維の構造を観察した.その結果,MamKはMamJ存在下では,均一な長さ分布の繊維を形成することがわかった.MamK繊維の長さ分布は,MamJの濃度依存的で,MamJ濃度の上昇に伴って短い繊維が形成された.磁性細胞内のMamKとMamJ濃度比は,およそ1:2であり,その条件でAFM観察されたMamK繊維の長さは,クライオ電子顕微鏡で観察された細胞内のMamK繊維の長さと類似していた.このことから,MamJはMamK細胞骨格の重合特性を制御する蛋白質であることが示された.