第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W5] ワークショップ5
選抜ワークショップ2:遺伝,分類,疫学

2022年3月30日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル3

コンビーナー:小椋 義俊(久留米大学),松井 英則(北里大学)

[W5-7/ODP-017] セレウス菌におけるPlcR転写制御系の違いがスフィンゴミエリナーゼ産生量に与える影響

横谷 篤1,高橋 歩実1,青山 諒子1,鴨志田 剛1,小阪 直史2,中西 雅樹3,藤田 直久4 (1京薬大・薬・微生物,2京府医・医・薬剤部,3京府医・医・感染検,4京都府保健環境研究所)

ヒトに対して敗血症などの重篤な感染症を引き起こすことがあるBacillus cereus(セレウス菌)は,スフィンゴミエリナーゼ(SMase)が重要な病原因子である.多くのセレウス菌は,SMase遺伝子を保有しているが,SMase産生株と非産生株に分類される.しかし,セレウス菌間でSMaseの生産量が異なる理由は不明である.SMase発現調節は,転写制御因子PlcRが,プロモーター領域に存在するPlcR box(16塩基から構成される遺伝子配列)に結合することで制御されている.本研究では,セレウス菌間のSMase生産量の違いの原因を明らかにするために,SMaseとPlcR転写制御系の関係を調べた.
SMaseとホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼCのプロモーター領域に存在するPlcR boxの配列を解析した.PlcR box配列の違いから,セレウス菌を3つのグループ(I, II, III)に分類した.グループIII群は,SMaseの発現をほとんど認めなかった.グループI群では,SMase産生量は定常期開始時に最大となり,定常期中に経時的に減少した.一方,グループII群では定常期中に維持された.また,各グループの代表株を用いて,マウスへの腹腔内投与による致死活性,マクロファージにおける貪食活性を調べた結果,SMaseを産生するグループIおよびII株はグループIII株よりも高い病原性を示した.
これらの知見は,セレウス菌のPlcR box配列がSMaseの産生に関与していることを示唆しており,配列解析から高病原性セレウス菌の早期検出に繋がると考えている.