第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W7] ワークショップ7
事例から考える感染症

2022年3月31日(木) 13:05 〜 15:05 チャンネル1

コンビーナー:大岡 唯祐(鹿児島大学),小西 典子(東京都健康安全研究センター)

[W7-4] 沖縄県のヒトレプトスピラ症における実験室診断,疫学的,臨床的特徴

柿田 徹也 (沖縄県衛研)

レプトスピラ属菌はスピロヘータの一つで,現在64種,24血清群,300以上の血清型が確認されている.レプトスピラ症は病原性レプトスピラによって起こる人獣共通感染症であり,ネズミやイノシシなどの野生動物,牛や豚などの家畜,犬などのペットが保菌動物であることが知られている.レプトスピラは近位尿細管に定着し,尿とともに排菌され,ヒトはその尿との直接接触,土壌や水を介した間接的接触により,経皮,経粘膜感染する.
ヒトのレプトスピラ症は,世界中で年間約100万人が感染し,58900人が死亡していると推計されており,その73%は熱帯地域での感染である.日本では,2003年11月より感染症法四類感染症に指定され,2020年までに年間16~76例が報告されているが,その約半数を沖縄県が占めている.沖縄県において,八重山地域,沖縄本島北部地域での河川での遊泳,カヌー等を含むレクリエーションによって感染する症例が多く,特にレジャーガイドの感染が多い.沖縄県は観光産業が盛んで,毎年国内から700万人,国外から300万人の観光客が訪れ,特に八重山,本島北部地域は2021年に世界自然遺産にも登録された.本症の潜伏期間は7-12日,観光客の平均滞在時間は約4日であることから,帰宅後発症する症例が認められるが,その数は少なく,把握されていない可能性がある.臨床症状は,発熱,筋肉痛,結膜充血等のインフルエンザ様症状から,腎不全,黄疸といった重篤な症状まで多彩で特徴に乏しく臨床診断が困難であるため,前述の疫学情報が類症鑑別に重要となる.
今回,沖縄県のヒトのレプトスピラ症の疫学的解析に加え,実験室診断,臨床症状の特徴について事例とともに紹介する.