第95回日本細菌学会総会

講演情報

学会企画 細菌学若手コロッセウム

[WCB] 【共催】細菌学若手コロッセウム―未来を拓く若手細菌学研究―

2022年3月29日(火) 14:30 〜 19:30 チャンネル2

コンビーナー:宮腰 昌利(筑波大学),一色 理乃(早稲田大学),柴田 敏史(鳥取大学),佐藤 豊孝(北海道大学),福田 昭(酪農学園大学)

[WCB-5] 凝集反応検査を自動化する-レプトスピラ症における顕微鏡下凝集試験の深層学習判定モデルを基に-

尾鶴 亮1,中野 里咲2,小山田 雄仁2 (1福岡大・医・微生物免疫,2鳥取大・工・電気情報)

抗原抗体反応を基にした凝集反応による検査は,原理が単純で安価かつ簡便に行えることから,様々な医療分野で用いられている.人獣共通感染症であるレプトスピラ症の診断でも,この原理を基にした顕微鏡下凝集試験(Microscopic Agglutination Test; MAT)が行われる.MATは希釈した患者血清とレプトスピラ生菌を混合し,凝集の有無を暗視野顕微鏡下で判定して抗体価を算出する手法である.しかし1検体あたり数十標本の鏡検が必要であり効率化が望まれている.また判定には,菌体とフィブリン塊等の血清中夾雑物との正確な識別や,凝集の程度の判定等への習熟が必要で,標準化が難しい.私たちは機械学習を用いたMATの判定自動化を試みている(Oyamada et al. PLOS ONE, 2021).MATで得られる顕微鏡画像から「MAT画像らしさ」を示す特徴量を抽出し,機械学習アルゴリズムを構築して凝集判定を行なった.このアルゴリズムは,判定精度自体は高かったものの,i) 250種以上あるレプトスピラ血清型の1種のみを学習した,ii) 検体の抗体希釈度を考慮していない,iii) 血清を含まない,生菌のみの陰性対照画像と比較していない,iv) 人間が設計した特徴抽出法が目的の凝集以外の特徴も抽出してしまう,などの改善点が残されていた.上記改善点のうち,i) は学習サンプルの増加で,ii) からiv) はアルゴリズムの改善で達成可能と考え,私たちは深層学習(Deep Learning)を導入した新アルゴリズムを構築し,複数血清型で判定を行なっている.本発表では新アルゴリズムの改善点と判定結果を述べると共に,新アルゴリズムの応用,特に他の感染症やそれ以外の凝集反応検査の自動化への応用可能性について議論する.