第32回日本がん看護学会学術集会

セッション情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション1
がん患者・家族の暮らしを支え尊厳を守るための看護を問い直す1
-症状をうまく伝えられない認知症患者への関わり方と人材教育のあり方-

2018年2月3日(土) 15:10 〜 17:10 第1会場 (幕張メッセ 国際会議場 コンベンションホール)

座長:片岡 純(愛知県立大学 看護学部 教授),久米 恵江(北里大学 北里研究所病院 がん看護専門看護師)

 世界に先駆けて超高齢社会を迎える我が国において、厚生労働省は2012年から認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)に取り組んでいる。また、2025年には認知症を患う人は700万人を超えるとの推計値が厚生労働省から公表され、2016年度の診療報酬改定において、「身体疾患のために入院した認知症患者に対する病棟における対応力とケアの質の向上」を目指して認知症ケア加算が新設された。高齢者が多いがん看護領域においても、必然的に認知症を併せ持つがん患者が増加していくことが予測される。
 現状のがん医療の現場でも、認知症患者との円滑な意思疎通が図れないことを起因として、患者の意思を尊重した意思決定支援や、がんの症状ならびに有害事象への適切な症状マネジメントに苦慮することが増えている。また、認知症とせん妄との区別が難しいことで精神症状への対応が遅れたり、認知症の患者を介護する家族が抱える問題への支援が求められたりするなど、さまざまな看護上の問題が起きている。
 認知症とがんを併せ持つ患者が今後増加することが予測されるなか、がん看護に携わる看護師が、認知症を患う高齢者の特徴やBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)に関する知識を有することは不可欠である。また、身体的な症状を適切に緩和することがBPSDの軽減につながると言われている。認知症とがんを併せ持つ患者が、適切な緩和ケアを受け安心して生活することを実現できる看護技術を提供することが求められている。しかしながら、看護教育において、老年看護学領域にて認知症看護と位置づけられた基礎教育が開始されたのは近年のことであり、認知症患者に対する看護の基礎教育を十分に受けないまま患者・家族と関わっている看護師も少なくない。加えて、核家族化に伴って生活体験としても高齢者及び認知症患者と関わったことがなく、認知症看護に戸惑っている看護師が少なくないことも事実である。
 認知症を併せ持つがん患者とその家族に対して、在宅・外来・病棟などの療養の場の違いを踏まえつつ、患者・家族のニーズに対応し、かつ尊厳と暮らしを守る看護を実践することが喫緊の課題であるといえる。
 本セッションでは医師、病院・病棟看護師、在宅看護師、老年看護学の教育者それぞれより、がん医療における認知症患者への対応の現状と課題について発表していただく。そして、「症状をうまく伝えられない認知症患者へ看護師がどのように関わることで患者・家族の暮らしと尊厳をまもることができるのか」という観点で現状の課題について意見交換を行い、「緩和ケアを提供できる看護師をどのように育成していくか」という継続看護教育について考えていきたい。