第33回日本がん看護学会学術集会

セッション情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション2
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)における多施設連携と看護の力
~がん患者の希望をつなぐ地域医療を目指して~

2019年2月24日(日) 14:00 〜 16:00 第1会場 (福岡サンパレス コンサートホール)

座長:野口 玉枝(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 看護部),濱口 恵子(がん研究会有明病院 緩和ケアセンター)

 がん医療の進歩に伴いがんの克服や長期生存が期待できるようになってきた。しかしながら、がんサバイバーが地域で生活していくにはいまだ課題が多い。第3期がん対策推進基本計画では、「がんになっても尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」を全体目標の一つにあげている。また、がん診療連携拠点病院の要件には新たに、「患者や家族に対し、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制を整備すること」を求めている。それらの背景には、現在のがん医療にはがん患者の意思や価値観を尊重した医療を実行しきれていない可能性がある。「患者本位のがん医療の実現」が全体目標に掲げられた所以であろう。
 「がんと診断された時からの緩和ケア」を推進されているが、いまだ緩和ケアに関する患者や医療者の誤解といった課題も残っており、一方、積極的ながん治療の継続・変更・中止に関する意思決定が困難な場合が多々ある。本来患者が望んでいる姿なのかどうかを改めて考える必要がある。
 厚生労働省は、2018年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を改訂した。高齢多死社会の進展に伴い、がん患者が住み慣れた地域や住まいで療養生活を送ることができるよう、拠点病院等との連携を確保しつつ、在宅医療・介護体制の整備等を進めることは喫緊の課題とされている。
 がん診断早期からの患者・家族と医療者との間で繰り返し行われる意思決定のプロセスで、患者の現在の気がかり、患者の価値観や目標、現在の病状や今後の見通し、治療や療養に関する選択肢を話し合うこと、ともに考え継続的に支え合う場面に看護師の役割は大きい。
 その人らしさを支え、患者が納得できる最善の治療とは何かを看護の視点で捉え、看護の力を発揮し、多職種チームで実践していくためにどのような取り組みが必要だろうか。現在のACPに関する話題の中では、情報共有のあり方、意思決定支援のプロセスを担う専門家の育成などの課題も多いと思われる。求められる看護師の役割とは何か、患者であるその人の価値観や思いを知るためのスキルについても高めていきたい。
 これらを踏まえ、患者の意思決定を支えるシステムについて、ACPの背景、近年明らかにされていることや課題について、知識を深めていきたい。さらに、現在実践されているACP、患者が地域で自分らしく生活していくための取り組みを看護スペシャリストの実践内容を含めて演者の方々に解説していただく。
 がんを抱えながらもその人らしく尊厳を持って過ごせるよう、地域社会で支えること、どのような多施設・多職種連携を目指していけばよいかを会場の皆様とともに考える機会としたい。