第34回日本がん看護学会学術集会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム2
がん患者中心の医療の質の改善を目指して

2020年2月22日(土) 16:00 〜 18:00 第2会場 (東京国際フォーラム ホールB7)

座長:小澤 かおり (東京慈恵会医科大学附属病院),森 文子 (国立がん研究センター中央病院)

 がん医療は急速に発展し高度で複雑になっている。患者や家族にとっては、医療が安全であることは当然のことであり、自分が満足できる質の高いがん医療を受けることを期待しているはずである。
 改めて、がん患者が安心・安全に質の高い医療を受けるとはどういうことなのだろうか考えてみる。医療事故防止、感染予防などの安全管理に留まらず、患者自身が大切にしている価値や意向を考慮した治療選択、心地よいケアの提供など、数値化できないことも患者や家族にとって安心・安全で質の高い医療と考えられる。これらは患者・家族と医療者との相互理解や協力によって可能になると考える。しかし、医療現場におけるさまざまな資源は限られ、その中で患者にとって安心・安全な質の高いがん医療をどのように提供できるのかについて、それぞれの医療者や医療機関が置かれた状況に合わせて考えていくことは重要な課題である。
 がん医療の質評価とは、患者本人とそれを取り巻く人々がその人らしく生き、生活することの質をがん患者中心に考えることであると考える。医療の質の評価では、結果(アウトカム)として、無病生存率や治療奏効率、生存期間、医療事故発生件数などが取り上げられることが多いが、がん医療の中でもとりわけ、がん看護においては、結果としてのアウトカムのみならず、そこに至るプロセスがどのようなものであったか、それは患者・家族にとってどのように意味あるプロセスであったか、ということも重視する必要があると考える。
 このシンポジウムでは、患者の医療の質改善に取り組んでいる多様な立場からご講演頂き、改めて、がん患者中心の医療の質とは何かを学び、複雑ながん医療およびがん看護の質に関わる課題と方略および展望を検討する。
 まず、がん医療やがん対策の評価に関わるご経験のある東尚弘氏から、医療の質に関する視点や考え方、臨床現場での活用について基本的な概念から理解し、がん看護の質の向上に生かすためのご講演をいただく。また、別府千恵氏には、大学病院で病院組織を運営されている看護管理者としてのご経験から、がん領域の専門看護師や認定看護師を生み出し、育み、スペシャリストとジェネラリストそして看護管理者が効果的に協働していくことのがん医療における意義についてお話いただく。そして実践事例として、桐ケ谷政美氏からは、積極的治療が難しくなった時にその人の生きてきた日々をふまえ、残された人がどうバトンを受け継いでいくのかを支援するがん看護のプロセスを、津村明美氏からは、日本初の小児・AYA世代病棟を立ち上げ、AYA世代がん患者・家族の生きるプロセスを支えるための病棟づくりから考えたがん看護の視点とさまざまな職種との協働をご紹介いただく。
 がん看護の質は何をもってどのように評価することができるのか、実践やシステムを改善しながら、看護師ががん患者や家族の豊かな生活、人生にどのように寄与しているかということについて具体的な事例も踏まえながら討議し、さまざまな立場や環境でがん患者のケアに関わる看護師自身が自分たちの役割について考える機会にしたい。