大会長挨拶
一般社団法人日本心エコー図学会 第31回学術集会開催にあたって
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一般社団法人日本心エコー図学会 第31回学術集会 大会長田邊 一明島根大学医学部 内科学第四 |
COVID-19に世界が影響を受けました。この世界で学術集会に出席する意義は何かと考えます。学術集会に出席することは、他人が何を考えているのか、スタンダードな考え方は何か自分の経験に加味する機会になると思います。演者が何を考えているのか、その人の頭の中を覗くことができる機会になります。いい師、ロールモデルと出会う機会にもなるかもしれません。学術集会に出席しなくても、議論された内容や論文発表された情報は様々な媒体で目にすることができる時代です。出席して直接触れることのできる情報はむしろ限られるかもしれません。私たちは情報という風があらゆる方向から吹きつける世界にいます。学術集会に出席することは、その時の正しい風向きを知る機会になるはずだと思います。学術集会に出席して得た情報は、どこか、同じお酒でも産地で飲むお酒がおい
しく感じるのと似ているような気がします。
若い医師や技師の方々にとっては、症例報告が学会デビューということが一般的だと思われます。「症例報告」は情報としての価値とともに、自らの知識、技術、臨床力を向上させる上でとても大事な手法です。自分の記録する心エコー画像が発表に使用されるとすれば、少しでも情報として役立つ画像にしないといけないと気を配るはずです。それが典型的な例としても教科書に使用されることがあるかもしれません。稀有な症例であれば、発表だけにとどまらずにぜひとも論文にしてください。発表の準備から発表の質疑応答の過程が論文をまとめる機運を盛り上げます。
「 格に入りて格を出でざる時は狭く 格に入らざる時は邪路に走る
格に入り、格を出でて初めて自在を得べし」
という芭蕉の言葉があるそうです。基本を学んで基本に愚直に忠実にいても「狭い」判断に陥ってしまいますが、基本を学ばずして我流でやるのは「邪路」に陥ってしまうもととなります。基本をしっかりと学び、ぶれない基軸を作ってから、個々の患者の必要に応じて応用問題を解くのが臨床現場では大切です。
「ご縁の国」島根県の松江市くにびきメッセにて開催させていただきます一般社団法人日本心エコー図学会第31回学術集会が、皆様にとりましてよい縁を結び、そして自在を得る契機になりますことを願っています。
