第68回年次大会・工学教育研究講演会

地区大会長挨拶

ようこそ!バーチャル北海道へ


 


第68回年次大会 地区大会長

北海道工学教育協会会長

瀬戸口 剛

 


 「ようこそ北海道へ!」と申し上げて、皆様を北海道大学工学部にお迎えできることを楽しみにしておりましたが、今年の年次大会(9月9日~11日)では、新型コロナウイルスの影響によりオンラインでの開催となりました。北海道に来ていただく機会は逃しましたが、逆に、オンライン工学教育を議論する絶好の機会とも感じています。
 北大工学部でも4月からオンライン授業となり、小職も慣れないなか試行錯誤しながら取り組んでいます。オンライン授業はやってみると、その良さがわかりました。
 まず、学生とのインタラクティブな授業ができます。こちらからの問いかけや授業への質問に対して、学生はチャットを使って反応します。さらにそれらのチャットに答えて、学生の興味を引き出しながら授業を展開することができます。授業自体が活性化し、自分でも予期しなかった内容に発展することもあります。
 つぎに、様々な講師に参加してもらうことができます。実務家教育は工学教育の重要な柱です。オンライン教育は場所を選ばないため、北海道であっても東京などから様々な実務に携わるオンライン講師陣に、それぞれのプロジェクトの紹介をしてもらうことができます。また、教える方も場所を選びません。講義を発信する場所が教室に縛られないため、街なかや制作現場などのフィールドに出て、生の情報を伝えることもできます。ただし、天候には左右されますが。
 ディスカッションの方法も変わりました。グループディスカッションができるオンラインソフトがあり、学生がオンラインでグループを作って議論をしたり、教員が各々の学生やグループを画面上で回ってアドバスしたりすることもできます。
 一方、オンライン授業では難しい科目もあります。特に、工学系では実験や演習科目など、対面型が求められる科目も多くなります。感染拡大防止に配慮しながら、実験や演習を行う方法もまだ確立されていません。また、オンライン実習や実験がどの程度教育的に効果があるかもわかっていません。オンライン教育はまだまだ開発途上でもあり、展開の伸びしろが大きいとも言えます。さらに、工学教育ではオンラインと対面型を融合させた、ハイブリッド型を模索していく必要もあるでしょう。
 今回の年次大会では、いまや世界中で試行錯誤が続いているオンライン教育について、それぞれ実践されている皆様の体験をもとに、そのノウハウをお互いに共有できれば、これに優る成果はありません。是非とも初めての試みとなる「日本工学教育協会オンライン年次大会2020」で、参加者皆様の体験や取り組みをシェアできることを願っております。


1991年 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻後期博士課程単位取得退学
1990年 早稲田大学理工学部 助手
1991年 北海道大学工学部 助手
1995年 北海道大学工学部 助教授
2010年 北海道大学大学院工学研究院 教授
2019年 北海道大学工学部長,工学研究院長,工学院長
2019年 北海道工学教育協会会長