日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3La] 発酵、酵素利用

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 L会場 (2F N205)

座長:小林 元太(佐賀大学)、成澤 直規(日本大学)、藤田 智之(信州大学)

11:00 〜 11:15

[3La-09] 醤油発酵・熟成工程における揮発性成分プロファイルの季節的変動

*水野 裕一1,2、吉村 臣史3、澤田 和敬3、柘植 圭介3、永野 幸生1,4、吉崎 由美子1,5、後藤 正利1,6、小林 元太1,6 (1. 鹿児島大・院・連農、2. 宮島醤油(株)、3. 佐賀県工技セ、4. 佐賀大・分析セ、5. 鹿児島大・農、6. 佐賀大・農)

キーワード:醤油、発酵、揮発性成分、GC-MS

【目的】近年の醤油発酵・熟成工程は人為的に温度制御を行って,4〜5ヶ月ほどで完了する.耐塩性乳酸菌や醤油酵母の働きによって醤油の風味が形成されるため,諸味の適切な温度管理は品質面において重要な要素の一つとなる.しかし,実製造で使用される屋外発酵タンクは外気温の影響を受けやすく,仕込時期によって諸味の経過が異なり,品質に差が生じることがある.そこで,品質の良い諸味の安定的な製造を目的とし,仕込時期の異なる諸味の揮発性成分プロファイルの違いについて評価した.
【方法】諸味の採取は春(4月),夏(8月),秋(11月),冬(1月)に発酵・熟成工程を開始した4つの異なる発酵タンクから経時的に行った.諸味上清をバイアルに所定量封入した後,窒素置換して分析用試料とした.バイアルを所定条件で加温後,SPMEファイバーを用いて揮発した成分を吸着させ,GC-MSに供してノンターゲット分析を行った.MS-DIALソフトウェアを用いて測定データのフィルタリングを行い,MetaboAnalyst 6.0を用いて解析を実施した.
【結果】主成分分析を行って,各諸味中の揮発性成分の動態を比較した結果,いずれの仕込時期も発酵が経過するとともに諸味中の成分プロファイルが徐々に変化し,主発酵酵母が活性化する発酵期(45~70日目前後)に成分プロファイルの顕著な変動が確認された.さらに,春と冬仕込では発酵期から熟成期に移行する70日目以降にも成分プロファイルの変動が確認されたが,夏と秋仕込にはそのような変動は見られなかった.また,熟成終了時の春と冬仕込の諸味は夏と秋仕込と比較してアルコール類やエステル類などの寄与成分が多く,これらの仕込時期の諸味は,より複雑な香気を形成しているものと考えられた.