第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL11] 教育講演11

Sat. Mar 2, 2019 9:30 AM - 10:10 AM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:竹内 宗之(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター集中治療科)

[EL11] 血流解析を活かした先天性心疾患の成人期手術

板谷 慶一 (京都府立医科大学 心臓血管外科・心臓血管血流解析学講座)

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2002年 東京大学医学部卒2011年 東京大学大学院医学系研究科卒
2012年 北里大学心臓血管外科血流解析学講座特任講師
2013年 同 特任准教授
2015年 京都府立医科大学心臓血管外科後期専攻医
2015年 株式会社Cardio Flow Design設立
2015年 社会医療法人北海道循環器病院理事
2016年 京都府立医科大学心臓血管外科・心臓血管血流解析学講座 講師
2018年 京都府立医科大学 成人先天性心疾患センター兼任
先天性心疾患の治療成績が向上し始めてきた近年、成人期の診療をどう行うべきか広く議論されるようになった。成人先天性心疾患は先進諸国を中心に急速に患者数が増大しているが、心臓外科学の歴史が浅く、成人期再治療に関するエビデンスに乏しい。しかしながら長期の生命予後を向上させるためには系統的なアセスメントが必要である。そこで当院では小児循環器から循環器内科の移行医療に加えて、適切な治療方針を系統的に考えるために心臓外科医も加わった成人先天性ハートチームを構築し、詳細な血行動態のアセスメントを行い、適切な適応や時期に手術介入を行い、また術後集中治療管理を含めた患者のマネジメントに注力している。
 一方、近年のIT技術の進歩に伴い、画像診断にCG(computer graphics)技術を導入できるようになり、多大な情報をわかりやすく提示できるようになってきた。加えて血流解析では流体力学を融合させ、病的な血流がもたらす心血管構造への力学的なストレスを可視化・定量することを行ってきた。心臓超音波を用いた血行動態評価や心臓MRIによる4D flow MRI、コンピュータによる流体シミュレーションが血流解析の手法として注目されつつある。 解剖や機能が複雑な成人先天性心疾患手術に際しては血行動態の把握と術式のプランニングが極めて重要である。我々は血流解析を積極的に導入し、右心系を含む血行動態のアセスメントには4D flow MRIを用い、加速血流がもたらすwall shear stressや心臓弁の逆流量・逆流率の定量化に努めている。また、心臓超音波でのcolor M modeに基づく左室心内圧較差(IVPD: intraventricular pressure difference)は左室拡張能の指標として知られ、ファロー四徴症心内修復後の肺動脈弁、三尖弁逆流などの右心系弁膜症術後の左室前負荷増大に対してどの程度耐容性があるかの見極めに用いられる。肺高血圧合併例ではTreat & Repairのconceptのもと一酸化窒素吸入と周術期の右心系血行動態モニタリングを積極的に用いている。また3D CTは胸壁との癒着や人工心肺管理などの情報に加え、CGと組み合わせることでFontan再手術例などでは仮想血行動態シミュレーションが可能になり、術前に最適な術式の選択を可能にする。
本講演では臨床検査モダリティごとの血流解析の手法を簡単に紹介したのちに、治療方針や術後管理に悩む成人先天性心疾患症例を具体的にどのように加療しているかという実例をご紹介し、成人先天性心疾患の遠隔機生命予後改善というまだ歴史が証明していない難題を血流解析という理論的手法がどう解決しうるのかを議論する。