第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL16] 教育講演16

Sat. Mar 2, 2019 2:55 PM - 3:35 PM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:中根 正樹(山形大学医学部附属病院 高度集中治療センター)

[EL16] 厚生労働省人事交流経験者が語る!救急・集中治療をとりまく医療行政入門

細川 康二 (広島大学大学院 救急集中治療医学)

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2003年 京都府立医科大学卒、同大学附属病院麻酔科
2009年 京都府立医科大学大学院卒、同大学附属病院集中治療部助教
2010年 京都府立与謝の海病院麻酔科医長
2013年 Université Libre du Bruxelles大学院 Erasme病院 救急集中治療部
2015年 厚生労働省医政局地域医療計画課課長補佐、2016年 病院前医療対策専門官
2017年 広島大学大学院救急集中治療医学講師、現在に至る
日本集中治療医学会社会保険対策委員会委員
現在、敗血症性脳症の研究に従事
発表者は、2015年から17年にかけて、人事交流者として厚生労働省医政局地域医療計画課で行政職に就き、医療行政に関わった。この課では、多くの医系技官が働き、わが国の医療について課題ごとに今後の方向を定める役割を担っている。発表者が関わったのは、医療計画や地域医療構想という施策であった。この施策は、医療法のもとで、増加した病床数の適正化をはかり、かつ、医療の質を保証するものである。医療の質は、特に5疾病5事業において強化が図られており、救急・災害医療もその一事業として重要視されている。行政に関わった経験をもとに、救急・集中治療に関わる医療行政を理解するうえで必要な入門的事項を概説する。
 まず、急性期医療のさまざまな施策の中で、救急医療については、救急救命士資格が作られ、救命救急センターが整備され、ドクターヘリコプターが事業化されてきた。救急医あるいは救急科専門医の社会的な知名度は上がり、2006年からは、医師・歯科医師・薬剤師調査(三師調査)において、救急科医師の数の統計が取られるようになった。一方、集中治療医の数は、同調査により集計されていない。
 次に、医療に関わる費用負担については、国民皆保険制度および二年ごとの診療報酬改定を中心としたさまざまなしくみにより、わが国では、人々が医療を安心して受けることができるとともに、医療機関と患者および保険者がともに破綻しないようになっている。救急・集中治療に関わる診療報酬として、救命救急入院料と特定集中治療室管理料がある。これらを請求する場合の診療環境や実績(算定要件)が細かに定められており、それを満たす場合に報酬が支払われる。平成30年度診療報酬改定での話題として、救命救急入院料に関しては、救命救急センター充実段階評価が救急体制充実加算の要件に組み入れられることになった。特定集中治療入院料では、重症度、医療・看護必要度に係る評価票の変更、早期離床・リハビリテーション加算が新設された。これら高度な医療を提供する入院の場では、さらに高い診療の質が求められる。なお、特定集中治療室では、専任の医師に、特定集中治療の経験を5年以上有する医師を2名以上含むことが上位の管理料を算定する条件となっているが、救命救急入院料においては、類似の専任医師の要件がない。
 また、医師は専門職の労働者である。プロフェッショナリズムを問われ、医師法にも応召義務と呼ばれる強い責任性を求める条項がある。一方で、労働基準法での労働時間の遵守が求められる。医師としての診療の質を維持、向上させる責務は、各専門学会や大学医局が負っているが、2004年からは医師臨床研修制度が、また、近年新しい専門医制度が始まった。今後、より広い視野に基づいた医師の育成と労務管理が進んでいく。