第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL18] 教育講演18

2019年3月2日(土) 16:25 〜 17:05 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:大野 博司(医療法人社団洛和会 洛和会音羽病院)

[EL18] 尿中酸素分圧とその臨床応用の可能性-急性腎傷害診療の新しい希望-

井口 直也1,2,3 (1.Pre-clinical Critical Care Unit, Florey Institute, 2.Department of Intensive Care, Austin Hospital, 3.大阪大学大学院医学系研究科)

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1999年鳥取大学医学部医学科卒
大阪大学医学部附属病院、国立循環器病研究センター病院等で集中治療、麻酔に従事
2009年大阪大学助教
2012年医学博士(大阪大学)
2015年10月-2018年10月Florey institute of Neuroscience and Mental Health(University of Melbourne)、Austin hospitalに留学
2018年10月大阪大学大学院医学系研究科麻酔・集中治療医学教室助教。
現在に至る。
専門分野は急性腎傷害。特に早期発症予測、臨床的に実行可能な発症予防法の開発。
現在は急性腎傷害の臨床研究に従事。
尿中酸素分圧という言葉は聞き慣れない先生方がほとんどだと思います。我々のグループは尿中酸素分圧を持続的にリアルタイムに測定する方法を開発し、急性腎傷害(Acute kidney injury、AKI)発症との関係を検討してきた。今回の講演では大動物(羊)でのdataおよび最新の臨床研究のdataを可能な限り多くご紹介し、尿中酸素分圧の基礎と臨床応用の可能性について議論したい。
AKIはその発症頻度の高さ、軽症であっても患者予後に影響するため集中治療領域で重要な病態と認識されており、近年は慢性腎臓病への移行も問題となっている。AKIの早期診断を目的にNGALを中心とするバイオマーカーの検討が行われてきたが、積極的な推奨を得るには至っていない。
AKI発症には腎髄質の低酸素がキーメカニズムとされる。我々のグループは解剖学的に腎髄質のvasa rectaと集合管が解剖学的に近接していることに着目し、まず大動物を用いて、敗血症性AKI発症時の腎髄質酸素分圧低下および敗血症において血行動態維持に用いられる血管収縮薬投与時の腎髄質酸素分圧の変化に尿中酸素分圧が緊密に追従することを示した。他の臨床使用される薬剤や治療的介入でも同様に腎髄質酸素分圧と尿中酸素分圧の良好な相関関係を認めている。臨床では人工心肺を使用する心臓外科手術患者において、術中の尿中低酸素が術後AKIを予測する独立した因子であることを報告し、現在もいくつかの臨床研究が進行中である。現在までに得られたdataは、尿中酸素分圧の値の変化だけでなく、尿中酸素分圧の絶対値も動物とヒトで近似していることを示している。
既存の膀胱カテーテルと組み合わせた尿中酸素分圧測定は非常に簡便で応用範囲が広い。尿中酸素分圧持続測定はAKI予測の非侵襲的でリアルタイムなマーカーとなる可能性がある。