第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL2] 教育講演2

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:今泉 均(東京医科大学麻酔科学分野・集中治療部)

[EL2] ICUに必要な画像診断とIVRの知識

船曵 知弘 (済生会横浜市東部病院 救命救急センター)

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1997年 慶應義塾大学医学部卒
1997年 慶應義塾大学医学部救急部研修医(放射線診断科研修)、1999年-専修医
2001年 国立病院機構災害医療センター放射線科医員
2004年 慶應義塾大学医学部救急医学助教
2007年 済生会横浜市東部病院救急科医長、2015年-副部長、2017年-部長(現職)
日本救急医学会救急科指導医、専門医
日本医学放射線学会放射線診断科専門医
日本外傷学会外傷専門医、日本IVR学会専門医
日本救急医学会評議員、日本外傷学会評議員、日本IVR学会代議員
DIRECT研究会代表幹事
 ICUで重症患者を管理する上で必要なのは多方面から客観的に評価することである。これによって、よりよい患者管理を行うことが出来る。臨床経過、検査所見、などのアセスメントが重要である。この検査のうち、重要な役割の一つが画像検査である。しかしながら、画像検査は血液検査などのように正常値がないこともあり、正常範囲内であるのか、異常であってもどの程度異常なのか、アセスメントが疎かになりやすい検査でもある。ICUで一番身近な画像検査は胸部単純X線写真である。通常の胸部単純X線写真よりも撮影条件が不良であるにもかかわらず、院内で最も状態が悪い患者の評価をしなければならない。したがって、高度な評価が必要とされる。頻回に撮影されるため比較も重要である。比較するにあたって、体位を含めた撮影の条件も加味しなければならない。また近年では超音波で呼吸循環状態の変化を観察することも可能であり、患者の移動が困難なICUにおいて非常に有用な画像検査の一つである。
 また治療法の一つとしてIVR(Interventional radiology)は確立されたものになっている。ICUに入室するもしくは入室中の患者に対するIVRは多岐にわたっており、外傷IVR、消化管出血などの内因性出血性疾患におけるIVR、膿瘍ドレナージやPTBD(Percutaneous transhepatic biliary drainage)などの感染症に対するIVR、さらに言えば、EVAR(Endovascular aortic repair)、脳動脈瘤に対するコイリング、心臓におけるPCI(Percutaneous coronary intervention)なども広い意味ではIVRである。ICUで患者管理をするうえで、基本的なIVRの内容やIVRの適応や限界、そして合併症などの知識を持っておくことは重要な事柄である。例えば、どの様な血管を塞栓し、それによって効果が期待でき、反対にどのような合併症が起こりうるのか、どの様なバイタル変化・臨床所見の出現が要注意なのか、その時にどのように対応すべきであるのかなどを知っておかなければならない。これらのIVRには、特有の管理が必要であり、時に再IVRもしくは手術などの代替治療を決断しなければならない場合もあるので、適切な判断を求められる。外傷診療では、従来から手術をするのかしないのかで分けられ、手術を選択しない場合の管理はNOM(Non Operative Management)と呼ばれ、IVRは保存的治療と同じようにNOMの一つとされている。しかしながら、IVRは手術と並んで積極的な治療法の一つであり、手術もIVRを行わない管理をNIM(Non Intervention Management)とすべきであろう。外傷診療においてIVRと手術は、治療の両輪であり、両者がかみ合ってよりよい診療を行うことが出来ることを、集中治療医としても知っておくべきであり、この2つは「or」で並ぶものではなく、「and/or」で考え、臨機応変に対応するべきである。