第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL21] 教育講演21

2019年3月2日(土) 11:20 〜 12:00 第5会場 (国立京都国際会館1F Room D)

座長:安宅 一晃(奈良県総合医療センター集中治療部)

[EL21] 急性膵炎の診断と治療 Up to Date

真弓 俊彦 (産業医科大学医学部 救急医学講座)

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1985年名古屋大学医学部卒業
1985年大垣市民病院研修医、外科医員
1991年ジョーンズホプキンス大学外科リサーチフェロー
1994年名古屋大学医学部第一外科学講座医員
1995年10月名古屋大学医学部附属病院集中治療部助手
1999年11月同講師
2011年 9月一宮市立市民病院救命救急センター長
2013年 3月産業医科大学医学部救急医学講座教授
現在に至る。
日本腹部救急医学会急性膵炎の診療ガイドライン作成のためのワーキンググループ責任者 (1997年-現在)、日本集中治療学会評議員、日本膵臓学会評議員
 急性膵炎の診療ガイドライン等による標準診療の普及などによって急性膵炎の死亡率は低下傾向にあるものの、重症例では今だ10%前後である。蛋白分解酵素阻害薬(PI)や抗菌薬とPIの持続動注療法は、後者の小規模なRCTが実施されているものの依然有用性は示されていない。重症膵炎では、敗血症と同様に、初期の急速輸液が大切であるが、漫然な過剰輸液はかえって予後を不良にすることが示されるようになってきた。有用性が多数の無作為化比較対照試験(RCT)で示されている経腸栄養は発症や診断から48-72時間以内の早期に行うことが必要であるが、まだまだ早期には実施されていない。
 Atlanta分類が2012年に改訂され、膵局所合併症の定義が変わるとともに、近年、感染性膵壊死に対する治療方針が大きく変わってきた。時には抗菌薬によって保存的な治療のみで経過観察する場合も許容され、内視鏡的あるいは直視下または鏡視下の、step-up approachなどの、より侵襲の少ない治療が選択されるようになってきた。
 また、急性膵炎におけるAbdominal compartment syndrome(ACS)の診断や治療に関して急性膵炎診療ガイドライン2015にも掲載された。ACSでは、まず、内科的治療を行い、それでも制御できない場合には外科的介入が推奨されている。
 Pancreatitis bundlesの遵守による予後の改善が示され、診断や重症度判定等に活用できるモバイルアプリも作成されており、それらを利用し、bundleを遵守することが望まれる。
 現在、日本でも、若手医師を中心とした後方視的なregistryから多数の論文が報告されつつある。また、長期予後も検討する急性膵炎の前向きのregistryが始まっており、多数の施設の参加による多数症例での解析が期待される。さらに、軽症膵炎での早期経口摂取の有用性を評価するRCTも開始されつつある。これらのAll-Japanでの研究によって、日本から質の高いエビデンスが発信される日も遠くはないと期待している。