第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL22] 教育講演22

2019年3月2日(土) 15:35 〜 16:15 第5会場 (国立京都国際会館1F Room D)

座長:坂口 嘉郎(佐賀大学医学部附属病院麻酔科)

[EL22] 敗血症性DICの発生機序に関する最近の話題とその対策

射場 敏明 (順天堂大学 医学部 救急科)

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1984 (S59)年 3月 順天堂大学医学部卒業
1986 (S61)年 5月 順天堂大学医学部外科学第二講座 専攻生
1987 (S62)年 4月 順天堂大学医学部外科学第二講座 助手
1989 (H元年) 6月 千葉大学医学部救急部集中治療部 専攻生
1989 (H元年) 9月 米国 エール大学血管外科 客員研究員
2006 (H18)年11月 順天堂大学医学部救急災害医学研究室 助教授
2007 (H19)年12月 順天堂大学医学部救急災害医学研究室 教授
現在、国際血栓止血学会DIC標準化委員会委員長
"炎症"と"凝固"はいずれも感染に対する宿主の防衛反応として捉えることができる。そして両者はそれぞれが独立して機能するのではなく、むしろ密接に互いが連携していることが明らかにされてきた。最近の研究結果は、"免疫血栓(immunothrombosis)"あるいは"炎症血栓 (inflammatory thrombosis)"と称されるこのような血栓は、病原体の全身播種を防ぐ役割を担っていることも示している。さらに血栓形成においては、凝固活性化のみならず、血管内に存在する細胞成分、すなわち白血球、血小板、赤血球、血管内皮などの機能変化が複雑に関与していることが注目されるようになっている。中でも好中球と血管内皮の果たす役割は重要で、前者はneutrophil extracellular traps(NETs)や細胞内から逸脱するdamage-associated molecular patterns (DAMPs)が血栓生成の重要なトリガーとなることが注目されている。ヒストンやcell-free DNA、HMGB1などのDAMPsは、それぞれが血小板や白血球の膜性状を変化させて凝固を促進する舞台を整え、その上で液性因子の反応である凝固を加速させ、さらに細胞死を誘導したり、extracellular vesicle (EVs)の放出を誘導することによって血栓形成を促進している。そしてこのような攻撃因子の加速度的増強に呼応するように、抗血栓的に機能するアンチトロンビンや活性化プロテインCなどの抗凝固蛋白は減少し、同じく抗血栓的に働く血管内皮の機能不全状態と相まって敗血症における血栓形成に複雑に関与している。血管内皮はトロンボモジュリンの発現やtissue plasminogen activatorの産生により抗血栓性に貢献しているが、同時に表面にglycocalyxを表出することにより、白血球や血小板をはじめとする血球の接着を制御している。しかしこの構造は極めてき弱であり、敗血症初期から容易に障害される。本教育講演では上記の敗血症性血管内凝固の発生機序ととものその対策について解説を行う。