第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL3] 教育講演3

Fri. Mar 1, 2019 2:45 PM - 3:25 PM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:内山 昭則(大阪大学医学部附属病院集中治療部)

[EL3] NPPV、 HFNC、 侵襲的人工呼吸 使い分けを基礎から考える

小尾口 邦彦 (市立大津市民病院 救急診療科・集中治療部)

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1993年京都府立医科大学医学部卒業
1993年京都府立医科大学附属病院研修医
1994年京都第一赤十字病院研修医
1999年京都府立医科大学大学院卒業
1999年大津市民病院救急診療科・集中治療部
2011年大津市民病院救急診療科診療部長
現在に至る
HFNC(high-flow nasal cannula)は2010年代に導入され短期間に全国的に普及しました。急性期医療のみならず、ガン末期患者においての使用も報告されるなど、幅広く用いられます。演者施設ICUにおいても、急性呼吸不全のみならず人工呼吸離脱・抜管後患者にHFNCを積極的に使用するといったプラクティスが一般的となっています。HFNCを使用すると確かに、ただの酸素療法を大きく上回る、その能力の高さを感じます。
HFNCが登場する約10年前、NPPVがやはり全国的に急激に普及し、ブームともいえる状況があったことを思いだします。医師・看護師・臨床工学技士などが、それぞれの立場に応じた切り口でNPPVに取り組み、それの成果やコツが発信されました。
HFNCの急激な普及に伴い、NPPVとHFNC、あるいは従来の酸素療法とNPPVの予後を比較した研究が発表されつつあり、あるいは多くが進行中です。「NPPV, HFNC, 侵襲的人工呼吸をどう使い分けるか?」に頭を悩ませる医療者は多いのではないでしょうか。
急性呼吸不全患者を対象としたFLORALI study(NEJM. 2015;2185)において、HFNCがHFNC, 酸素マスクに比して28日時点の挿管率が最も低かったと報告されました。「さよならNPPV。これからはHFNC。」的に解釈される向きもあります。しかし、FLORALI studyは、本来NPPVが得意とする慢性呼吸不全の増悪、心原性肺水腫、重篤な好中球減少症などを対象から除外し、I型呼吸不全を対象としていること、多くが肺炎患者であったことなど、NPPVの不利は当然といえるものでした。エビデンスの集積はこれからといったところです。演者はNPPVが好きなのですが、NPPVをうまく使いこなすためにはさまざまなコツを必要とし、「NPPVは乗り手を選ぶ」と感じています。NPPVのコツやポイントを知らずに使用しても、おそらく良い結果は得られません。逆説的に言うなら、NPPVのコツやポイントを知らないのであれば、他のデバイスを選ぶべきでしょう。
本教育講演においては、今一度呼吸管理の基礎をおさらいし、NPPV、HFNC、侵襲的人工呼吸の比較をしようと思います。
肺保護換気といっても、ARDSに対する肺保護換気とCOPDに対する肺保護換気のポイントは異なります。肺胞傷害疾患の代表格としてのARDS、閉塞性肺疾患の代表格としてのCOPDについて復習しましょう。その上で、NPPV・HFNC・侵襲的人工呼吸をいかに使い分けるか?に結びつけたいです。
人工呼吸にまつわる話は難しくなりがちですが、基礎の復習と整理に重点をおきます。明日からの実臨床に役立つものとしたいと考えます。