第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL5] 教育講演5

Fri. Mar 1, 2019 4:15 PM - 4:55 PM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:瀬川 一(京都大学医学部附属病院麻酔科)

[EL5] 急性胆道感染症の診断と治療 (Tokyo Guidelines 2018を中心に)

岡本 好司 (北九州市立八幡病院 外科/消化器・肝臓病センター)

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1992年 産業医科大学大学院卒 医学博士
同年  産業医科大学第1外科学 助手
2002年  同  講師
2011年  同 准教授
2011年 北九州市立八幡病院 外科主任部長、消化器・肝臓病センター、センター長
2012年 産業医科大学 医学部 第1外科学 臨床教授併任(現在)
2013年 佐賀大学 医学部 救急医学 臨床教授併任(現在)
2015年 北九州市立八幡病院 副院長(現在)
日本腹部救急医学会理事
日本外科感染症学会理事
日本Acute Care Surgery 学会理事
日本血栓止血学会理事
 急性胆道感染症の診断と治療は、各施設での独自の診断や治療がなされていた時代から、2005年に高田忠敬先生を中心に筆者らが「科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」を本邦で世界に先駆け作成し、診断基準や重症度判定基準などが統一されることとなった。さらに、海外のエキスパートたちとの国際会議後にTokyo Guidelines for the management of acute cholangitis and cholecystitis 2007 (TG07)が制定され、日本発のガイドラインが国際的にも使用されるようになった。その後、国外国内様々な施設よりガイドラインに対するvalidation studyなどの報告があり、よりエビデンスが蓄積され、2013年にTG13、2018年にTG18として改訂されている。
 急性胆道感染症、特に急性胆管炎の病態は、時として敗血症から多臓器不全や播種性血管内凝固症候群(DIC)などを発症し、予後不良となることが知られている。従って、患者を診察した場合、初期治療を行いながら診断を並行して行うことが求められる。TGでは、診療フローチャートとして重症度別に治療指針が作成されている。急性胆道感染症が疑われる患者の初期診療においては、まず、バイタルサイン測定による緊急性の有無の評価を行う。緊急性ありと判断された場合は診断確定を待たずに初期治療と必要に応じて呼吸・循環管理を直ちに開始する。次に詳細な診察(問診、理学的所見)に引き続き、血液検査と画像検査を行い、それらの結果を踏まえて急性胆管炎・胆嚢炎の診断基準を用いて診断を確定する。診断が確定したら直ちに初期治療を開始するとともに急性胆管炎・胆嚢炎の重症度判定基準を用いて重症度判定を行うとともに全身状態の評価を行う。全身状態の評価にはCharlson co-morbidity index (CCI)やThe American Society of Anesthesiologists (ASA) Physical Status(PS)classificationが有用である。重症度を判定したら急性胆管炎・胆嚢炎診療フローチャートに基づいて治療方針を決定し迅速に遂行する。
 急性胆道感染症治療の基本は、感染巣のコントロールである。すなわち、急性胆管炎では内視鏡的胆管ドレナージや経皮経肝胆道ドレナージであり、急性胆嚢炎では胆嚢摘出術や胆嚢ドレナージである。全身状態を考慮しつつ、適切な手技にて治療を行うべきである。決して、無理をせず、その施設で最も得意とする手技で行うことが肝要である。重症例などで集中治療などの全身管理が不可能な施設では、TGに示されている搬送基準に則って、然るべき施設に搬送することが望ましい。さらには、バンドルをTG13から作成し、チェックリストと共に診療の一助としている。以上について、TG作成に最初から携わっていたものとして、集中治療を専門とする医師の方々に紹介させて頂く。