第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL6] 教育講演6

Fri. Mar 1, 2019 11:30 AM - 12:10 PM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:井上 茂亮(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野)

[EL6] 抄録を改善してみませんか?

林 淑朗 (医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 集中治療科)

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【略歴】
学歴
1998年 3月 群馬大学医学部医学科卒
2007年 3月 群馬大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)
職歴
1998年 6月 群馬大学医学部附属病院研修医
2000年 6月 済生会宇都宮病院麻酔科医員
2001年 4月 株式会社日立製作所日立総合病院麻酔科医員
2002年 6月 群馬大学医学部附属病院集中治療部医員
2005年10月 群馬大学医学部附属病院集中治療部助教
2008年10月 クィーンズランド大学臨床研究センター博士研究員
2011年 2月 Royal Brisbane and Women's Hospital集中治療科
2012年 5月 クィーンズランド大学臨床研究センター上級講師
2013年 1月 医療法人鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科部長(現在に至る)
2013年 2月 クィーンズランド大学臨床研究センター名誉准教授
資格
日本集中治療医学会認定集中治療専門医
日本麻酔科学会認定麻酔科指導医・専門医
社会活動
日本集中治療教育研究会(JSEPTIC) 理事長
日本集中治療医学会 評議員
日本集中治療医学会では、学術集会あり方委員会および過去数回の総会大会長を中心に、学術集会の抄録の水準を向上させるべく取り組みを行っている。学術集会の抄録は、研究で得た知見を端的に読者に伝えるものでなければならず、演題の優劣や採否を決定するための唯一の材料であるばかりか、参加者にとっても多数の演題の中から聴講する演題を決めるための判断材料になる。また、学術集会の抄録は、将来第三者が行う研究のための資料になることもある。学術集会の抄録はこのような目的に即したものでなければならない。さらには、多くの学会員にとって、抄録執筆が最も身近な研究執筆活動である点も重視し、抄録の書き方の指針を与えることは日本集中治療医学会の責務でもあると考えている。

しかし、従来の日本集中治療医学会学術集会では、抄録執筆に関する制限は最大字数のみであった。そのためか、形式が多様で、科学学研究の報告に必要な項目が欠如していたり、行われた研究と直接関係のない不必要な文言が記述されていたりと、上記の抄録に期待される用途に適わない抄録が少なくなかった。

一方、近年、多くの学術集会では、構造化抄録を採用している。構造化抄録とは、【背景】【目的】【方法】【結果】【結語】などの項立てに沿って記述された抄録を指す。日本集中治療医学会学術集会総会でも、前回より、この形式での記述を推奨している。そして今回(第46回)は、【背景】と【目的】を分けて記載すること、【目的】に可能な限り仮説を明示すること、【方法】に研究デザイン、対象患者、介入方法(介入がある場合)、主要評価アウトカムを明示すること、そして考察は不要であることを指針として明示した。

また、日本集中治療医学会学術集会の発表演題全体に占める症例報告の割合が極めて大きい点を考慮し、症例報告のための抄録執筆の指針を提案した。まず、症例報告の内容に関して、症例や経験などの報告事項にどのような価値があるか、何が新規の知識として追加されるかが読者にわかるように記載することを求めた。価値ある報告事項としては、非典型的な臨床経験、新しい診断方法の報告、新しいもしくは稀な有害事象の経験、アウトカムを改善した介入の経験、臨床ケアを改善した経験、教育(臨床提示)が主なものである。形式は、症例報告でも構造化抄録とし【背景】【臨床経過】【結論】の形式での記述を推奨した。さらに、タイトル中に「~の1症例」、「症例報告」、「ケースレポート」などの用語を入れること、【背景】に、この症例報告の価値ある点の説明を求めた。

日本集中治療医学会としては、教育セミナー等も開催し会員とともに学びながら学術集会の抄録の改善を段階的に行なっていきたいと考えている。本講演もその一環である。最後に、抄録改革に取り組み始めてまだ2年目で、改革に取り組む側にも様々な不備があり、会員の皆様に不都合が生じた点をお詫び申し上げる。