第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演セッション

[ELS3] 教育講演セッション3 ECMOの基礎知識

2019年3月3日(日) 09:30 〜 10:30 第2会場 (国立京都国際会館2F Room A)

座長:市場 晋吾(日本医科大学付属病院 外科系集中治療科)

[ELS3-1] ECMOの基礎1─ECMOビギナーに必要な知識

清水 敬樹, 萩原 祥弘 (東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター)

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1995年 広島大学医学部医学科 卒業
1995年 東京大学麻酔科 研修医
1997年 公立昭和病院 救命救急センター
2000年 さいたま赤十字病院 救命救急センター
2014年 東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター 部長/救命救急センター長現在に至る
日本集中治療医学会 専門医・評議員日本救急医学会指導医 専門医・評議員日本外傷学会 専門医・評議員日本熱傷学会 専門医日本蘇生学会 指導医・評議員専門分野:ECMO、呼吸・循環管理、頭部外傷、胸部外傷、脳蘇生、IVR、広範囲熱傷、熱中症、母体救命、シミュレーション教育
H1N1インフルエンザのパンデミックやCESAR trialなどを契機に世界的にrespiratory ECMOは普及が進んだ。また、2018年に発表されたEOLIA trialの結果を踏まえてもrespiratory ECMOは新時代を迎えたと考えられる。この流れの中で日本でも少しタイムラグがあったものの、システム、ハード面、経験、体制の充実化も図られ、結果的に成績も向上しつつある。今回、Respiratory ECMOの管理に関して重要なこと、注意すべきこと、ピットフォールなどに関して特にビギナーの皆様へ以下のモダリティで解説したい。1. 定義と歴史2. 適応基準3. 必要なデバイス4. 導入方法とその選択(VA, VV)5. ECMOの管理・離脱特に3に関して、カニューレの選択、カニューレ挿入部位、位置決定は非常に大きな問題である。原則としては太く短いカニューレが望ましい。またSVC脱血からIVC送血とする方法やIVC脱血からSVC送血とする方法や、大腿V経由でのIVC脱血から対側での大腿V経由でのIVC送血などが想定される。その際も、酸素化を効率良く維持させるには「Flow is everything」という言葉があるように血液流量を十分に得ることが非常に重要になってくる。また、同様にrecirculationを上手く低下させる管理が重要になる。そのためには、より適切なカニューレの選択が重要であり、各カニューレの構造上の特徴などを理解しておく必要がある。また、回路内圧の測定とその対処方法は管理を維持していく上では必要最低限の知識であり、医師、最も身近で管理する看護師、臨床工学士にとって重要な基礎知識である。5に関しても特に強調したいことは、とにかく合併症を生じさせないことが管理の大原則、全てである、ということである。出血合併症が生じた場合には輸血や抗凝固薬の調整に終始することになり、血行動態の維持目的での輸液量も増加してしまい、何の管理をしているのか分からなくなるような状態に陥る場合もある。感染が生じた場合にも同様なseptic shockへの対応に終始する。これらの合併症が無いECMO管理はある意味では「退屈なECMO管理」と揶揄されることもあるが、この「退屈なECMO管理」こそが、患者には最も望ましい。合併症を生じさせないためには、カニュレーションの技術は大前提であり、それ以降はきめ細かな管理、回路チェック、患者チェック、データーチェックを油断することなく確認する必要がある。当たり前のことを日常的におこない、いかに「退屈なECMO管理」に持ち込むことができるか、がrespiratory ECMO管理の成功への鍵となる。