第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育セミナー(イブニング)

[ES2] 教育セミナー(イブニング)2

経肺熱希釈法モニタリングの過去・現在・未来 by PiCCO Club Meeting -2nd season-

2019年3月1日(金) 18:00 〜 19:30 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:久志本 成樹(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野), 石倉 宏恭(福岡大学医学部救命救急医学講座)

共催:ゲティンゲグループ・ジャパン株式会社

[ES2-1] 循環の生理学から考える集中治療 ~新たなPiCCO userの視点から~

中村 謙介 (日立総合病院 救急集中治療科)

循環は生命に最も重要な因子であり循環が破綻した状態をショックという。循環は救急集中治療において最優先に維持されるべきものであり、各種モニタリングによってその努力がなされているが、「循環とは何か?」という問いに答えられる人は少ないと思われる。循環の定義が定まっていないのがその一因だが、循環を生理学的にperfusionとoxygen deliveryという2要素に分ける考え方が患者の循環の理解に役立つ。perfusion組織還流とは全ての毛細血管レベルまで十分な血流がなされることであり、これには流体力学的にdriving pressureすなわち血圧が必要である。血圧‐blood flow曲線を主要臓器ごとに想定する考え方が重要である。一方oxygen delivery酸素運搬は単位時間あたりの酸素運搬の絶対量のことであり(多いほど循環は有利となる)Oxygen deliveryは計算式をもってヘモグロビンと酸素飽和度、心拍出量がつくるということができる。Oxygen deliveryは酸素摂取率O2ERによる代償機転が存在するがperfusionにはそのような代償が効かない。perfusionとoxygen deliveryの両者が成り立っていることが循環維持されているということができる。つきつめれば循環をモニタリングするとは血圧、心拍出量、ヘモグロビン、酸素飽和度を管理することでありそれが十分であることを乳酸値やSvO2、尿量でチェックすることである(さらに心拍出量の元を作る前負荷の評価を含めることになる)。古くからある肺動脈カテーテルは予後に寄与しないとして臨床における使用が減っているものの、これらの循環に関わる様々な情報を提供してくれる強力な生理学的モニタリングである。昨今は経肺熱稀釈法を実施でき動脈圧波形解析を継続して行えるデバイスが普及し、集中治療において臨床使用しやすくなってきた。これらを用いることで生理学的かつ理論的な集中治療を提供することができるようになり、若手医師やスタッフへの教育効果も大きい。日立総合病院では肺動脈カテーテルや経肺熱稀釈法デバイスをこれまでも使用してきたが、最近さらに使いやすくなったPiCCOを導入し、今まで以上にこれら循環のモニタリングがしやすくなった。本講演ではperfusionとoxygen deliveryを中心に循環の生理学について解説し、臨床的側面からPiCCOの有用性について論じたい。