[IL(J)1] 医療の質・安全への新しいアプローチ、レジリエンス・エンジニアリング
【 オンデマンド配信】
1984年 神戸女子薬科大学 卒業
1988年 大阪大学医学部 卒業
1996年 ハーバード公衆衛生大学大学院 卒業
2001年大阪大学医学部附属病院医療情報部 助手
2003年 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 准教授
2016年 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 教授
医療の質・安全学会理事(2015年-現在)
専門は医療の質・安全
1988年 大阪大学医学部 卒業
1996年 ハーバード公衆衛生大学大学院 卒業
2001年大阪大学医学部附属病院医療情報部 助手
2003年 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 准教授
2016年 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 教授
医療の質・安全学会理事(2015年-現在)
専門は医療の質・安全
医学、医療の進歩は目覚ましく、患者への侵襲度の低減、生命予後やQOLの向上等に寄与している一方で、治療手技の高難度化、高齢で併存疾患を有する患者の増加等は、医療安全上の脅威となっている。近年、医療や宇宙航空など、高い信頼性が求められる社会技術システムにおいて、レジリエンス・エンジニアリングと呼ばれる新しい安全へのアプローチが注目されている。レジリエンスとは物やシステムの有する弾力性や柔軟性のある特性を意味する。この理論が生まれた背景には、従来型の安全管理手法には限界があること、冗長性を中心とした対策には膨大なコストがかかること、また複雑系科学の進歩などがある。
これまでの医療安全は、有害事象を減らすことを目的として、「失敗事例」を学習の対象とし、特定された原因に対して個別の安全対策を講じてきた。近年、新しい医療安全へのアプローチとして注目されているレジリエンス・エンジニアリングは、複雑適応系であるヘルスケアシステム(チームや組織等)が、 さまざまな擾乱と環境的制約がある中で柔軟に対応できているメカニズムを解明し、 またそのレジリエンス特性(柔軟な適応力)を利用し、 物事がうまく行われることを目指すものである。
本理論では、失敗事例ではなく、普段の仕事がどのように行われているのかについて理解することを中心的課題として扱う。仕事のなされ方は、「決められた通りのことが順番に行われる(スタティックでリニアなモデル)」と捉えるのではなく、「あらゆる機能は変動し相互につながっている(ダイナミックでノンリニアなモデル)」と捉える。さらに、個人のパフォーマンスをスナップショットで捉えて、その良し悪しを後方視的に分析するのではなく、システム全体(チームや組織等)を一つのものとして捉え、システムを構成する人々の行動やつながり(ミクロの視点)がシステム全体の挙動(マクロの視点)にどのように影響を与えているのかを分析する。
集中治療部をはじめ医療チームはレジリエントなシステムであるが、個々の医療職がどのように相互作用し、チーム全体としてうまくパフォーマンスが統合されているのか、また、相互依存関係にある院内のさまざまな部門がどのように相互作用し、病院全体としてうまく機能しているのかなどについて、これまで明らかにされていない。本講演では、薬剤部と病棟間の相互作用から創発する問題、救命救急チームメンバーの適応的対応、手術チームメンバーの言語的つながり等を例にとり、レジリエンス・エンジニアリング理論の概要について紹介する。本アプローチの導入により、複雑で動的な医療システムの振舞いを先行的にマネジメントするとともに、安定的に制御することが可能になると期待される。
これまでの医療安全は、有害事象を減らすことを目的として、「失敗事例」を学習の対象とし、特定された原因に対して個別の安全対策を講じてきた。近年、新しい医療安全へのアプローチとして注目されているレジリエンス・エンジニアリングは、複雑適応系であるヘルスケアシステム(チームや組織等)が、 さまざまな擾乱と環境的制約がある中で柔軟に対応できているメカニズムを解明し、 またそのレジリエンス特性(柔軟な適応力)を利用し、 物事がうまく行われることを目指すものである。
本理論では、失敗事例ではなく、普段の仕事がどのように行われているのかについて理解することを中心的課題として扱う。仕事のなされ方は、「決められた通りのことが順番に行われる(スタティックでリニアなモデル)」と捉えるのではなく、「あらゆる機能は変動し相互につながっている(ダイナミックでノンリニアなモデル)」と捉える。さらに、個人のパフォーマンスをスナップショットで捉えて、その良し悪しを後方視的に分析するのではなく、システム全体(チームや組織等)を一つのものとして捉え、システムを構成する人々の行動やつながり(ミクロの視点)がシステム全体の挙動(マクロの視点)にどのように影響を与えているのかを分析する。
集中治療部をはじめ医療チームはレジリエントなシステムであるが、個々の医療職がどのように相互作用し、チーム全体としてうまくパフォーマンスが統合されているのか、また、相互依存関係にある院内のさまざまな部門がどのように相互作用し、病院全体としてうまく機能しているのかなどについて、これまで明らかにされていない。本講演では、薬剤部と病棟間の相互作用から創発する問題、救命救急チームメンバーの適応的対応、手術チームメンバーの言語的つながり等を例にとり、レジリエンス・エンジニアリング理論の概要について紹介する。本アプローチの導入により、複雑で動的な医療システムの振舞いを先行的にマネジメントするとともに、安定的に制御することが可能になると期待される。