[IL(J)8] 日本初の本格的EHR:千年カルテプロジェクト
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1949年長崎県佐世保市生まれ。大阪大学、宮崎医科大学を卒業後、1995年まで10年間外科。その後医療情報学分野へ。
1995年宮崎医科大学教授
2000年熊本大学教授
2003年京都大学教授
2013年京都大学を定年で退任
2014.4~2016.3まで宮崎大学病院長
2016.4より京都大・宮崎大兼任(EHR共同研究講座)。
1995年より医療情報の共通化プロジェクト
2001年より第1次EHRプロジェクト
2015年より第2次EHRプロジェクト(千年カルテプロジェクト)
地球上どこからでも、患者が自分のカルテ情報にアクセスできる。こうしたシステムの実現のため、政府の次世代医療ICT基盤協議会が立ち上げたのが「千年カルテプロジェクト」である。また、収集、蓄積された医療情報の2次利用によって、医療の質向上を図るのも同プロジェクトの大きな目標だ。千年カルテのようなEHR(Electronic Health Record: 医療情報連携基盤)の日本での取り組みは古く、1995年の医療情報共通規格開発(MML: Medical Markup Language)にまでさかのぼる。その後、熊本県や宮崎県で、具体的な仕組みづくりが始まり、東京都や京都府へと拡大。東日本大震災によって医療情報管理の重要性が再認識されたのを機に2015年、これら先例を引き継ぎ、日本医療研究開発機構(AMED)の採択事業としてスタートした。EHRの実現には、3つ課題の解決が必要だ。1つ目は「データの所在」。患者の医療記録の所在がわからなければ、EHRは機能しない。2つ目は「データの互換性」。異なる電子カルテベンダーのデータ形式を共通化する規格の開発・普及である。3つ目が「アクセス制御」。個人情報を扱うので、閲覧可能な人や組織をシステムが自動制御する仕組みが不可欠。 これらの技術的問題を解決し、同プロジェクトでは、医療機関や患者へのサービスを、ゼロ次利用から、1次、1.5次、2次利用までの段階に分類している。ゼロ次利用とは、電子カルテなどの医療情報をバックアップし、災害時などへの備えとする利用法。1次利用とは患者自身や医療スタッフによるデータ閲覧(医療情報の共有)をいう。複数の医療機関でのデータ共有が可能になり、診療連携が実現する。1.5次利用とは、EHRの実名医療データを活用した診療支援のことを指す。例えば、EHR上の医療データを人工知能が分析し、異常値の発見、感染症の流行予兆など、医療上のリスクを予測する。 一方、2018年5月11日に施行された「次世代医療基盤法」により認定される「認定匿名加工医療情報作成事業者」が、実名で医療情報等を集め、これを匿名化して有料で研究者等に提供出来ることになった。この匿名化医療情報を使って、医療の質向上や医薬品研究開発、公衆衛生、臨床研究、疫学研究、治験支援などにつなげていくのが医療情報の2次利用と位置づけられる。