[IL(J)9] 重症頭部外傷患者に対する長時間の軽度低体温療法・高体温回避療法 多施設無作為臨床研究の総括
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1972年 山口大学医学部 卒業
1978年 同 附属病院 麻酔科講師
1984年 同 附属病院 救急部助教授
1995年~2010年 同 医学部救急医学教室 教授
1996年~2002年 日本集中治療医学会 理事
2004年 同 学術集会 会長
2005年~2008年 同 監事
2008年~2012年 同 理事長
2001年~2009年 日本救急医学会 理事
2006年 同 学術集会 会長
2009年~2012年 同 監事
2010年~2011年 徳山中央病院 顧問
2011年~2018年 山口県立病院機構 理事長
2018年4月~現在 山口県立大学 理事長
我々が2002年から進めてきた重症頭部外傷患者に対する軽度低体温療法B-HYPO(RCT既発表論文8編+α)を総括する。【プロトコール概要:UMIN-CTR, No.C000000231】1,2) 適応基準: GCS 4-8 (M 6除外)の患者、15歳以上-70歳未満、男女、受傷2時間以内に冷却開始可能、除外基準をクリアした患者300症例目標。軽度低体温群(MTH群、32.0-34.0℃)と高体温回避群(FC群、35.5-37.0℃)、2:1にランダム割り付け。各目標温を72時間維持、1.0℃/日で復温、受傷後7日まで高体温 (≦38℃)回避。受傷6か月後のGOSを最終評価。【RCT実施】 RCT参加16施設でIRB の承認取得。 2002年12月-2008年5月までUMIN登録サイトを利用・厳重なセキュリティを確保。脳循環を担保する厳重な循環管理を実施。統計はITT(第1報)、Per Protocolデータで解析。厚労科研により実施し、COI なし。【原著・第1報】1,2) 重症頭部外傷患者に対する長時間軽度低体温療法 MTH群(n=98)、FC群(n=50).結果:二群間の背景因子でISS(MTH vs FC, P = 0.03)以外に有意差はなし。受傷6か月後のGOSで予後不良(SD,PVS,D)患者はMTH群で53%、FC群で48%(p = 0.597)、死亡率は35%、23% (p = 0.18)であった。 第2報3):頭蓋内占拠性病変除去、かつ50歳以下患者の予後(GOS). 第3報4) :AIS 3-4患者 ・AIS 5患者の予後. 第4報4):来院時K+値と予後. 第5報5):目的体温到達日の血糖値とGOS. 第6報3):来院時のPaO2、P/F 比(PaO2/FIO2)とGOS. 第7報4):来院時の血液凝固異常の有無とGOS. 第8報6):緩徐な復温(軽度低体温療法群)と神経学的予後. 第9報3):内径静脈球部温/脳温と肺動脈温較差と神経学的予後. 第10報7):内径静脈球部血/混合静脈血の酸素飽和度較差と神経学的予後.【B-HYPO論文まとめ・RCT成功の鍵】 MTH群とFC群間で6か月後の神経学的予後(GOS)に有意差はでなく1,2)、頭蓋内占拠性病変除去・50歳以下の患者ではMTHで優位に予後が改善した3)。AIS 3-4患者では死亡率がFC群で優位に減少した4)。血糖値はMTH群、FC群ともにday3まで優位に減少し、受傷1日目の血糖値で6か月後の生死判定が可能である5)。来院時に正常K+患者はMTH群よりFC群で優位に予後が良い4)。重症頭部外傷早期にはPaO2が高いと予後が良く、PaO2は生死に関する独立した変数である3)。来院時に凝固障害がある患者でも、予後は必ずしも悪くない4)。MTH群では復温に時間をかけた方が神経学的予後は良い6)。内径静脈球部温と肺動脈温の較差が大きいと有意に神経学的予後が良く、この較差はGOSと相関した3)。酸素飽和度較差(SO2pa-jv)が小さくなると神経学的予後が悪い7)。脳志向型患者管理、上手なランダム化をしたRCTでは背景因子に有意差が少なく、二次解析も楽であり、多くの論文を書くことができた。