[JPD2-1] 日本の敗血症の疫学:sepsis registryからのメッセージ
Surviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)の普及などにともない、敗血症が注目され、世界各国で敗血症患者の登録・解析が進められてきた。敗血症の年次推移や長期予後に関する調査など、海外から興味深い報告が続く。sepsis registryから何を学び、そのメッセージをどう生かすか、日本の敗血症の主な疫学研究から考察する。
1.日本集中治療医学会では、Sepsis Registry委員会において2007年10月から3か月間、severe sepsisおよびseptic shock患者を調査し、47施設266例(平均年齢67歳)を解析した結果、主な感染部位は,腹腔内、呼吸器、カテーテル・血流,軟部組織、尿路の順であり、起炎菌は上位からMRSA41例, Esherichia coli 36例,Klebsiella pneumoniae 28例,Pseudomonas aeruginosa 28例,MSSA24例であった。ICU入室日の平均APACHEIIスコア20.3、SOFAスコア8.5で院内死亡率は37.6%であり、急性期DIC症例は全体の47.4%でICU死亡率も61.1%と高率であった。(日本集中治療医学会雑誌2013)
2.日本救急医学会では、2010-2011年にかけてSepsis Registry委員会において第1回目の敗血症疫学研究を学会主導で行い、委員会15施設で治療したsevere sepsis(sepsis-2)624例(平均年齢69才)を登録・解析した。診断日における平均APACHIIスコア23.4、SOFAスコア8.6であり、病院死亡率は29.5%であった。severe sepsis診断日のseptic shock、DICの存在は、重要な転帰規定因子として死亡率を倍増させることが明らかとなり、共存症の存在は、特に晩期死亡に関連する重要因子であることが示唆された。本研究結果から、septic shockおよびDICに対する、より効果的な予防策、治療法の開発が今後の重要な課題と考えられた。(J Infect Chemother 2014)
3.日本救急医学会では、多施設共同試験委員会において第2回目の敗血症疫学研究(FORECAST Sepsis研究)を学会主導で実施した。2016-2017年の1年間、委員会施設を含む59施設で治療したsevere sepsis1184例(年齢中央値73才)を登録・解析した。診断日におけるAPACHEIIスコア23、SOFAスコア9(ともに中央値)であり、病院死亡率は23.4%であった。うち、敗血症性ショックは全severe sepsis患者の62.9%を占め、病院死亡率は27.9%であった。主な感染部位は、呼吸器、腹部、尿路、軟部組織の順であった。他国のデータに比べ高齢化が顕著であり、敗血症診療におけるSSCG3時間バンドルの遵守率や各種支持療法の使用率は比較的高かった。一般化推定方程式モデルにより、転帰規定因子として年齢、併存症、感染部位、臓器障害重症度が抽出された。(Crit Care in press)
学会主導の敗血症疫学研究は、日本の敗血症診療の実態を知り、今後のレベルアップを図るために重要と考えられる。全国レベルで質の高い、より網羅的なsepsis registryを継続的に行い、敗血症患者の特徴や治療・転帰の推移を明らかにすることが重要と考えられる。
1.日本集中治療医学会では、Sepsis Registry委員会において2007年10月から3か月間、severe sepsisおよびseptic shock患者を調査し、47施設266例(平均年齢67歳)を解析した結果、主な感染部位は,腹腔内、呼吸器、カテーテル・血流,軟部組織、尿路の順であり、起炎菌は上位からMRSA41例, Esherichia coli 36例,Klebsiella pneumoniae 28例,Pseudomonas aeruginosa 28例,MSSA24例であった。ICU入室日の平均APACHEIIスコア20.3、SOFAスコア8.5で院内死亡率は37.6%であり、急性期DIC症例は全体の47.4%でICU死亡率も61.1%と高率であった。(日本集中治療医学会雑誌2013)
2.日本救急医学会では、2010-2011年にかけてSepsis Registry委員会において第1回目の敗血症疫学研究を学会主導で行い、委員会15施設で治療したsevere sepsis(sepsis-2)624例(平均年齢69才)を登録・解析した。診断日における平均APACHIIスコア23.4、SOFAスコア8.6であり、病院死亡率は29.5%であった。severe sepsis診断日のseptic shock、DICの存在は、重要な転帰規定因子として死亡率を倍増させることが明らかとなり、共存症の存在は、特に晩期死亡に関連する重要因子であることが示唆された。本研究結果から、septic shockおよびDICに対する、より効果的な予防策、治療法の開発が今後の重要な課題と考えられた。(J Infect Chemother 2014)
3.日本救急医学会では、多施設共同試験委員会において第2回目の敗血症疫学研究(FORECAST Sepsis研究)を学会主導で実施した。2016-2017年の1年間、委員会施設を含む59施設で治療したsevere sepsis1184例(年齢中央値73才)を登録・解析した。診断日におけるAPACHEIIスコア23、SOFAスコア9(ともに中央値)であり、病院死亡率は23.4%であった。うち、敗血症性ショックは全severe sepsis患者の62.9%を占め、病院死亡率は27.9%であった。主な感染部位は、呼吸器、腹部、尿路、軟部組織の順であった。他国のデータに比べ高齢化が顕著であり、敗血症診療におけるSSCG3時間バンドルの遵守率や各種支持療法の使用率は比較的高かった。一般化推定方程式モデルにより、転帰規定因子として年齢、併存症、感染部位、臓器障害重症度が抽出された。(Crit Care in press)
学会主導の敗血症疫学研究は、日本の敗血症診療の実態を知り、今後のレベルアップを図るために重要と考えられる。全国レベルで質の高い、より網羅的なsepsis registryを継続的に行い、敗血症患者の特徴や治療・転帰の推移を明らかにすることが重要と考えられる。