[JPD2-5] 世界の敗血症対策と日本の政策
世界では未だ敗血症に罹患する人は年間3100万人、敗血症で死亡する人は年間600万人とされ、その多くが「防ぎ得た死亡」と言われている。2010年に結成されたGlobal Sepsis Alliance (GSA)は、2020年までに敗血症による死亡を20%減少させることを目標に、医療従事者や一般市民に向けた敗血症の啓発活動を行うとともに、国際保健機関(WHO)および各国の政府機関に対して敗血症対策への協力を求めてきた。2017年にはWHO総会において「敗血症の予防、正しい診断、適切な治療を先進国、発展途上国に関わらず推進すること」が世界中の人々の健康における重要な課題として議決された。また同年、ドイツで開催されたG20ハンブルグ・サミットでは、首脳宣言の中に「保健、薬剤耐性との闘い」として、1.保健システムを世界的に強化するための協調的行動の推進、2.その中心的な役割を果たすWHOの改革を奨励し、迅速な資金調達メカニズム等の財政的支援を提唱すること、3.薬剤耐性について国別行動計画を実施すること、4.抗微生物剤の研究開発のための新たな「国際的連携ハブ」の設立を要請すること、が記載された。このように敗血症は多剤耐性菌とともに世界の保健課題として認識され、その対策が各国の政策に反映されようとしている。日本では2013年に日本集中治療医学会の委員会としてGSA委員会が設立されて以来、敗血症セミナーの開催や9月13日の世界敗血症デーのイベントを通して、医療従事者と一般市民に向けた敗血症の啓発活動を行ってきた。2018年からは日本救急医学会および日本感染症学会と合同委員会を設立し、敗血症に関わる専門集団が「All Japan」で敗血症対策に取り組む体制を構築しつつある。今後は厚生労働省にも働きかけ、日本における敗血症対策を政策として進められるように協力する方針である。