第46回日本集中治療医学会学術集会

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ジョイントシンポジウム

[JSY3] ジョイントシンポジウム3
(日本集中治療医学会・日本救急医学会/神経集中治療ガイドラン作成委員会企画) 重症heat strokeに対する神経集中治療2019:社会復帰率を上げるために

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 4:00 PM 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:黒田 泰弘(香川大学医学部附属病院救命救急センター), 清水 敬樹(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[JSY3-1] 重症熱中症に対する冷却法について

神田 潤1, 三宅 康史1, 清水 敬樹2, 坂本 哲也1 (1.帝京大学 医学部 救急医学講座, 2.東京都立多摩総合医療センター)

ライブ配信】

 熱中症の症状は多岐にわたり、他の疾患との鑑別や重症度の判断が難しい。熱中症の軽症例は、高体温には至らず脱水症状が中心であり、適切な補液(点滴のみ)で症状が軽快するのに対して、重症例は多臓器不全を呈する致死的な病態であり、社会復帰率も高くない。重症例には、高体温に対する冷却と冷却後の集中治療管理が重要であるが、鑑別困難な症例や軽症と判断してしまった症例では、点滴のみの治療(冷却せず)となり、転帰が悪化することになる。
 高体温に関する冷却法としては、アイスプール(Cold water immersion)、蒸散冷却などの体外冷却、血管内冷却カテーテルを用いた深部冷却やゲルパッド式水冷体表冷却などの有効性を示したCase seriesが散見されるが、特定の冷却法を支持する大規模調査は行われていない。海外では、スポーツや労働で発症した労作性熱中症に対してはアイスプール、日常生活中に発症した非労作性熱中症に対しては蒸散冷却が冷却法として用いられることが多いが、我が国では労作性・非労作性を問わず後者を用いる施設が大半である。Heatstroke STUDYでの報告では、深部体温が40度以上で中枢神経症状を呈した症例(従来のHeatstrokeに該当)のうち冷却法が明らかな193症例の冷却法ごとの死亡率は、蒸散冷却・氷嚢・水冷式ブランケットなどの体外冷却では21.6%、胃洗浄や膀胱洗浄を用いた体内冷却を併用した場合は16.5%であったのに対して、点滴のみ(冷却なし)では42.9%と有意に高かった。重症例に対しては、速やかに積極的に冷却を行うことが必要だが、その方法は各施設の状況によって選択するのが容認されているのが現状である。
 冷却後の集中治療としては血漿交換や血液浄化療法、抗DIC治療、合併した敗血症への抗菌薬治療を行った報告があるが、各臓器障害に推奨される特定の治療法はない。
 熱中症の重症例に対しては、熱中症の明確な定義や鋭敏な重症度の指標、重症度に応じた推奨すべき冷却法、冷却後に実施すべき集中治療を明らかにする必要がある。
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