第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ジョイントシンポジウム

[JSY5] ジョイントシンポジウム5(
日本集中治療医学会・日本リハビリテーション学会) 早期リハビリテーション医療における多職種チームビルディング ~それぞれの立場から~

2019年3月2日(土) 09:40 〜 11:10 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:田島 文博(和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座), 西田 修(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[JSY5-1] 早期リハビリテーション医療における多職種チームビルディング ~集中治療医の立場から~

西田 修 (藤田医科大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

ライブ配信】

集中治療領域における比較的短期の生命予後は、近年目覚ましく改善してきている。一方で、ICUに長期間入室した生存者の多くは、身体障害・精神障害・認知機能の低下が遷延し、日常生活動作(ADL)ならびに生活の質(QOL)の低下、社会復帰が困難となっていることが明らかになってきている。これは、Post intensive care syndrome(PICS)として近年大きな問題となっている。さらに、PICSは患者家族に対しての精神的影響も含むものとして認識され始めており、その裾野の広さは計り知れないものとなってきている。少子高齢化が進む中で、集中治療により救命してもその多くが要介護となるような構図は社会的に見ても決して健全な状態とは言えず、集中治療の存在自体が揺るぎかねない潜在的な問題をはらんでいる。
PICSの構成要因である神経筋機能障害はICU-acquired weakness (ICU-AW) と呼ばれ、敗血症、多臓器不全、長期人工呼吸管理のいずれかに該当する重症患者のうち約50%に発生するとされる。その発生・進展には高度侵襲、薬剤の影響、身体的不動、栄養障害と不適切な栄養管理などが複合的・相乗的に関連している。よってICU-AWの対策はこれらの因子をいかに軽減するかにかかっている。そのためには、病態生理を深く理解しそれに立脚した管理を行うことが最も重要である。例えば、敗血症などの高度侵襲下では、筋量750~1000gに相当する250gの筋蛋白質が一日で喪失されていることを理解し、侵襲の軽減を図りながら十分な蛋白投与を行う必要があり、血液浄化を行っていればそこからの喪失も考慮する必要がある。ICU-AWの対策として、早期リハビリテーション医療の介入が有効であるとされるが、栄養管理も含めた適切な集中治療管理を行わなければ早期リハビリテーション医療の効果も望めない。また、早期リハビリテーション医療の実現には、適切な鎮痛・鎮静薬の管理が非常に重要である。平成30年度の診療報酬改定では「早期離床・リハビリテーション加算」が新設され、ICUにおける多職種連携を前提としたリハビリテーション医療チームの取り組みが評価されることになった。これらチーム医療における集中治療医の位置づけは、PICSならびにICU-AWの要因の軽減、病態・病期に応じた適切な全身管理、効果的な早期リハビリテーション医療のためのフィジカル面のアセスメント、鎮痛・鎮静薬の適切な処方、他のチームスタッフ並びに患者・家族への集中治療医学的観点からの説明などを担う立場であるといえる。効果的な早期リハリハビリテーション医療が実現可能な状況を作れるかどうかは集中治療医にかかっている。