第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ジョイントシンポジウム

[JSY5] ジョイントシンポジウム5(
日本集中治療医学会・日本リハビリテーション学会) 早期リハビリテーション医療における多職種チームビルディング ~それぞれの立場から~

2019年3月2日(土) 09:40 〜 11:10 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:田島 文博(和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座), 西田 修(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[JSY5-2] 早期リハビリテーション医療における多職種チームビルディング ~リハビリテーション科医の立場から~

田島 文博 (和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学講座)

ライブ配信】

 リハビリテーション医学は患者の障害を克服し,機能を改善し,活動を育むことが役割である.リハビリテーション治療は、手術・投薬と同じ治療であり,診察,検査のうえ,診断し治療を行う.リハビリテーション医療においても臓器別治療や医学的全身管理は当然で,それに加え,救命後の活動性を改善する事が肝要である. 具体的な急性期リハビリテーション治療法は座位・立位,運動療法である.重症患者に施行するには日頃の勉強で重力負荷・運動に関する生理学的基礎知識を理解する.例えば,起立負荷は重力による下肢への血液移動がおきる.静脈環流量は低下し,心拍出量も低下する.自律神経および内分泌機能応答が正常な患者なら血圧の維持が可能である.心拍応答,末梢血管支配交感神経応答,ADH分泌応答,レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系応答,hANP応答,等々基本的な動態の理解は重要である. 次に運動の効果についての理解が必要である.運動は量が十分であれば,脳由来神経栄養因子を増加させ,ナチュラルキラー細胞活性を向上させ,マイオカインを発現させる.創傷治癒も促進する.なにより,循環呼吸器系を賦活化し,痰の排泄を劇的に増やす.それに対して,安静臥床はすべての調節系を機能不全にし,骨塩・筋肉量を低下させ,見当識・認知機能を低下させる.安静臥床の良い面を探しているが,今のところ見出されていない. これらの知識をもって,早期にリハビリテーション治療をしなければ効果が少なくなる.人工呼吸器やAラインをつけたまま起立訓練・運動療法を施行することはリスクを伴うが患者のために実施する.また,どこまで動かして良いかは残存筋の筋力を正確に評価・診察出来ていなければ不可能である.もちろん画像所見と血液検査結果は意味がわかっていなければならない. 以上を考えると,チームビルディングで最重要なことは医師も含め各職種における教育である.医師・看護師に関しては卒後教育システムが構築されているが,理学・作業療法士においては始まったばかりである.我々は15年間,療法士教育をリハビリテーション医療推進の柱に位置付けてきた.新人を迎える4,5月にはクルズスを行い,毎週1回病棟回診,訓練室回診,画像カンファ,ケースカンファ,抄読会など続け,医師,療法士教育に努めた.そして,職種関連なく研究に取り組む.リハビリテーションチーム医療で最も重要なのは教育であり,発展させるのは研究である. 日本リハビリテーション医学会では本年理事会監修によりコアテキストを発行した.また,療法士会員制度を立ち上げ,日本リハビリテーション医学教育推進機構と協力し,教育コンテンツの作成に取り組んでいる.これらを通じて,日本集中治療学会と協調し,最良の急性期リハビリテーション医療の普及に取り組みたい.