第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育セミナー(ランチョン)

[LS10] 教育セミナー(ランチョン)10

スタンフォード流 ICUでのせん妄管理~多面的なリハビリテーションアプローチ~

Fri. Mar 1, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:瀬尾 龍太郎(神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター)

共催:パラマウントベッド株式会社

[LS10] スタンフォード流 ICUでのせん妄管理
~多面的なリハビリテーションアプローチ~

高谷 昇平 (Stanford Health Care, Department of Rehabilitation, USA)

〔はじめに〕スタンフォードメディカルセンターICUでは、安易なアーリーモビリティー実践を良しとせず、患者の社会復帰を目的とした、個人を尊重したペイシェント・センタードなリハビリテーションの提供に力を注いできました。今回は、当院ICUでのリハビリテーションの取り組みを、日本語にて事例を交えながらご紹介したいと考えております。

〔概要〕せん妄はICUで頻繁に発生しており、人口呼吸器使用患者では60~80%、非人口呼吸器使用患者では20~50%が影響を受けている。せん妄入院患者は、人工呼吸器使用期間長期化、挿管チューブとカテーテル類の自己(事故)抜去、身体拘束の必要性といったリスクが高まる。くわえて、せん妄は入院長期化、医療コスト高騰、院内死亡率、退院後の施設収容率の増加をまねく[1]。

これまで慣例的にせん妄管理は薬理学的介入にフォーカスがあたっていたが、近年の研究では薬理学的介入と非薬理学的介入のコンビネーションが最も効果的なせん妄管理介入と証明されている。非薬理学的介入はアーリーモビリティ(EM)に限られず、睡眠衛生管理や感覚器官への刺激及びそれらの管理を含む。

当院ではICU看護師がルーチンとしてCAM-ICUを実施し、陽性の場合にはその看護師が一連のせん妄管理介入を開始する。それらの一つは、作業療法士と理学療法士へのコンサルテーションを要請する事である。

EMはABCDEFバンドルにおける不可欠な要素であり、せん妄期間短縮に効果的な介入であることが示されている。くわえてEMは人工呼吸器使用期間、ICU在室期間、在院日数を減少させ、身体的機能改善に有効とされている。EMは多職種連携チーム内の看護師、理学療法士、作業療法士、医師の誰でも実施することができ、内容はPROMから重力負荷トレーニング、チルトベッド上でのADL訓練、歩行までおこなわれる。

また、せん妄管理における作業療法士の早期介入の効果は文献によって支持されている。当院ICUでの作業療法士の役割には、認知機能刺激、複数の感覚器官刺激、運動機能刺激、睡眠衛生訓練、患者家族の介入参加促進といった内容が含まれている。

患者の日常活動計画作成や睡眠の質の向上への取り組み、理学療法士・作業療法士・看護師の業務調整、光療法(光への露出)のために屋外に連れて行く等、当院の多職種チームは、学際的に一致団結してICUにおけるせん妄管理を推進している。

[1] Brummel NE, Girard TD. Preventing delirium in the intensive care unit. Crit Care Clin. 2013;29(1):51-65.