第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育セミナー(ランチョン)

[LS21] 教育セミナー(ランチョン)21

救急・集中治療領域におけるワルファリン服用患者の出血マネージメント

Sat. Mar 2, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:坂本 哲也(帝京大学医学部救急医学講座)

共催:CSLベーリング株式会社

[LS21-2] 救急医療におけるプロトロンビン複合体製剤の安全使用戦略

岡野 雄一 (熊本赤十字病院第一救急科)

【はじめに】プロトロンビン複合体製剤(Prothrombin Complex Concentrates、以下PCC)は、抗凝固薬内服中の重篤出血事象に使用されており、PCCは迅速なPT-INR値の補正や、PCC投与後の侵襲的処置時の出血コントロールに有用であると多数報告されております。2017年にワルファリン使用中の重篤出血に対し、4F-PCC(商品名ケイセントラ)が保険適応で使用可能となり、当院でも同年ケイセントラを緊急採用しました。しかし当院ではPCCの適応や製剤の選択や投与量については医師個人に委ねられており、適応や安全使用の点で問題がありました。その為、救急科と関係各科及び薬剤部が協力しワーキンググループを結成し、PCCの安全使用を目的として、当院独自のPCC使用ガイドラインを作成しましたので、ここで紹介させて頂きます。
【PCCガイドラインの紹介】当院で作成したPCCガイドラインの特徴は、以下の3点です。(1) 抗凝固薬の種類に応じ3種類のフローチャートの作成、(2) PCC専用シリンジポンプの設置、(3) PCCオーダー時に注意事項のポップアップ表示。またPCC使用時には救急科が窓口となって、救急科管理の下で原則ERにて投与することでPCCの適正使用を担保できるように工夫しました。PCCガイドライン作成までの経緯及び作成までに苦労した点や、海外でのPCC安全使用方法について紹介させて頂き、自施設でのガイドライン作成の一助になれば幸いです。
【PCCガイドラインの効果】PCCガイドライン導入後(2018年以降、23例)と導入前(2017年以前、95例)と比較した結果、PCCの適正使用率の向上(95.7% vs 81.1%; p=0.22)だけではなく、PCC使用頻度の増加(2.1±0.9件/月 vs 1.7±1.3件/月; p=0.047)や、救急搬入からPCC投与までの時間短縮(68±25min vs 93±84min; p=0.01)も認めました。今後はガイドラインの使用経験や救急現場からの意見を参考にして、PCCオーダーセットの作成や、PCC投与量と投与速度の自動計算ソフトを導入し、より迅速にかつ安全にPCC投与ができるガイドラインに改訂する予定です。
【おわりに】本セミナーでは、多忙な救急現場でのPCCの適正使用及び安全使用におけるPCCガイドラインの有用性、可能性について紹介します。