第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育セミナー(ランチョン)

[LS22] 教育セミナー(ランチョン)22

新しい微生物診断テクノロジーが切り開く集中治療領域の感染症診療

2019年3月2日(土) 12:40 〜 13:40 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:藤谷 茂樹(学校法人 聖マリアンナ医科大学救急医学)

共催:ビオメリュー・ジャパン株式会社

[LS22] 新しい微生物診断テクノロジーが切り開く集中治療領域の感染症診療

志馬 伸朗 (広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 医学講座 救急集中治療医学)

 集中治療室(ICU)入室患者の1/2は何らかの感染症を有し,3/4が何らかの抗菌薬処方を受ける。そのため集中治療領域における抗菌療法は重要な臨床課題で、特に致死率の高い敗血症性ショックを合併する重症感染症では、初期の抗菌療法のタイミングや選択が患者生命予後に直結する。一方、初期治療の失敗を回避する目的で広域の抗菌薬が選択されがちな状況は問題であり、抗菌薬スチュワードシップ(ASP)をICUでいかに適用して行くかが課題となる。
 重症感染症において広域の抗菌薬の過剰使用を回避する重要な手段に、de-escalationがある。これは、原因微生物の同定と薬剤感受性結果に基づき広域抗菌薬を狭域の標的抗菌薬に変更する手法で、臨床現場に徐々に普及しつつあるが、いまだ十分とはいえない。特に、従来の培養検査では、菌種および薬剤感受性同定までに48時間以上を要することが、de-escalation施行の障壁となっていた。
 近年新たな微生物診断手法として:1)質量分析計(MALDI-TOF TS)、2)マルチプレックスPCR(Filmarray)、3)マイクロアレー(Verigene)、などが開発され、迅速かつ正確な微生物診断が可能になりつつある。特に、これらを活用することにより、de-escalationの推進が期待できる。また、最新機器を用いない微生物検査技師による診断手法の工夫も行われている。
 本講演では、これら新しい微生物診断手法を中心にした感染症診断の最近の動向について概説するとともに、救急集中治療領域における抗菌薬適正使用の考え方についてあらためて議論したい。