第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育セミナー(ランチョン)

[LS26] 教育セミナー(ランチョン)26

診断にこだわる敗血症診療

2019年3月3日(日) 12:40 〜 13:40 第1会場 (国立京都国際会館1F メインホール)

座長:藤谷 茂樹(学校法人 聖マリアンナ医科大学救急医学)

共催:株式会社日立ハイテクノロジーズ

[LS26] 診断にこだわる敗血症診療

志馬 伸朗 (広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学)

 敗血症の初期診療には1 時間バンドルの適用が推奨されており、感染症診断としての血液培養検査と、治療介入としての経験的抗菌薬の投与が含まれる。
 実診療では、まず感染症の存在を疑い、その上で感染臓器と微生物を類推し、適切な微生物検体を採取/保管/提出/処理する。その上で適切な初期経験的抗菌薬を迅速に投与する。血液培養検査の提出は、即時的な情報提供ではなく、経験的抗菌薬を変更あるいは中止するための重要な情報であり、結果を基に経験的抗菌薬は可及的すみやかに狭域の標的抗菌薬へde-escalation する。
 より良い転帰を達成するためには、漫然と検査を行い、結果を評価するだけでは足りない。感染症診断に"拘り"、臨床現場において診断精度を高める様々な努力や工夫が必要である。診断を支援する様々な検査手法や機器を正しく理解し、活用しなければならない。また、メディカルスタッフと上手に連携し、適切な情報を求め続けなければならない。
 しかし、感染症の診断は依然として容易ではない。いや、誤解を恐れずにいえば、拘らなければいくらでも容易に流しうる危険性がある。発熱やCRP の変化のみを追い、抗菌薬を処方したり中止変更することが可能だ。過去にもそして現在も、この様な診断プラクティスは残念ながら依然として存在するのだろう。しかし、精度の低い診療は、敗血症の予後改善あるいは抗菌薬の適正使用への足枷となりうる。
 近年、感染症診断ことに微生物診断において、遺伝子診断手法を用いた新しい診断技術が臨床現場で利用可能になってきた。これらを上手く活用することで、敗血症診療が大きく改善することが期待される。自施設での経験や文献的考察を含めて、診断にこだわる敗血症診療についてお話したい。