第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育セミナー(ランチョン)

[LS30] 教育セミナー(ランチョン)30

敗血症性DICを考える ~基礎と臨床の立場から~

2019年3月3日(日) 12:40 〜 13:40 第5会場 (国立京都国際会館1F Room D)

座長:早川 峰司(北海道大学大学院医学研究院 外科系部門侵襲制御医学分野 救急医学教室)

共催:一般社団法人 日本血液製剤機構

[LS30-1] 敗血症病態における血栓形成の光と影

伊藤 隆史1,2 (1.鹿児島大学病院救命救急センター, 2.鹿児島大学大学院医歯学総合研究科システム血栓制御学)

 敗血症の際には、白血球や血管内皮細胞の表面に血小板が接着し、循環血小板数の低下を招く。活性化した白血球は、組織因子を発現したり、細胞内容物を放出したりすることにより、血液凝固反応の引き金を引く。血管内皮細胞の表面では、抗凝固分子の発現が低下し、血液凝固反応に対するブレーキが弱まる。さらに、血管内皮細胞表面で生じる線溶反応は、PAI-1の上昇によって鈍化する。このように、敗血症の際には、生体の応答が血栓形成を助長する方向にシフトする。このような血栓形成は、生体防御反応なのだろうか、それとも、システムの誤作動・副反応・過剰反応なのだろうか。
 近年、敗血症の動物モデルにおいて、血液凝固反応をシャットダウンすると微生物の拡散が助長されてしまう可能性が報告されている。また、微生物が血栓を溶解することによって拡散していくことも報告されている。このようなことから、血栓形成には微生物を局所に封じ込める意義があると考えられ、immunothrombosis(免疫血栓)という概念で注目されるようになった。
 では、敗血症の際の抗凝固療法は、どうあるべきだろうか?血栓形成は感染防御に寄与していたとしても、宿主にとって虚血性臓器障害を引き起こす要因ともなる。そのメリットとデメリットのバランスのもとに、抗凝固療法の適応を考慮する必要があると考えられる。抗凝固療法の開始基準について、明確な線引きをするためのエビデンスは整っていないが、臓器障害の徴候を考慮することが重要かもしれない。