第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育セミナー(ランチョン)

[LS4] 教育セミナー(ランチョン)4

急性腎障害バイオマーカーの使用経験と今後の課題

Fri. Mar 1, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:柳田 素子(京都大学医学部腎臓内科学)

共催:アボットジャパン株式会社

[LS4] 急性腎障害バイオマーカーの使用経験と今後の課題

土井 研人 (東京大学医学部救急科学)

急性腎障害(acute kidney injury: AKI)の発症はICU患者における有意な予後悪化因子であり、早期検出と早期介入がAKI症例の予後改善には重要である、という考えのもと複数のAKIバイオマーカーが開発された。我が国においてはL型脂肪酸結合蛋白(L-type fatty acid-binding protein: L-FABP)と好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin: NGAL)が臨床応用されるに至った。しかしながら、このような検査指標の有用性を証明するには、特定の検査指標に基づいた治療介入がアウトカム改善をもたらすといった介入研究が必要であり、現時点においてはL-FABPやNGALに関してこのような臨床研究は報告されていない。診断ツールと治療を組み合わせた臨床研究をプランするにあたり、1)どの指標を用いるのか、2)カットオフ値をどのように定めるのか、3)どのような治療を用いて介入するのか、といった項目を定める必要がある。新規薬剤開発が進まないAKI領域において、近年注目されている治療戦略が血液浄化療法の早期介入である。早期の定義がそれぞれの介入研究によって異なること、臨床的にも血液浄化療法開始の基準が施設ごとに異なること、が問題視されているが、AKIバイオマーカー測定による客観的な評価は、このような状況において有用な可能性がある。また、介入研究に先立って観察研究による知見から適切なカットオフ値を設定する必要があると考えられる。本発表においては当施設での臨床使用経験を示すとともに、AKIバイオマーカーを如何に有効に用いるかという視点で議論を進めたい。