第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

教育セミナー(ランチョン)

[LS7] 教育セミナー(ランチョン)7

若手集中治療医のための血行動態モニタリング ー血行動態モニタリングは面白い! 私たちの使い方ー

Fri. Mar 1, 2019 12:40 PM - 1:40 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小谷 穣治(国立大学法人 神戸大学大学院医学系研究科 災害・救急医学)

共催:エドワーズライフサイエンス株式会社

[LS7-1] 血行動態モニタリングから始まる循環管理:循環の「見える化」

徳田 賢太郎 (九州大学病院集中治療部)

 集中治療における循環管理は、呼吸管理とともに、重症患者という今にも止まってしまいそうな車を走らせるための車輪の一つであり、その両輪をきちんと回転させ続けなければ生命を維持することができない。そのため集中治療に携わる医療者は、「循環」という車輪がきちんと回っているのか、あるいは何らかの異常が生じていないか「血行動態モニタリング」をおこないながら看視する必要がある。
 循環管理は以下の一連のループ構造からなる:①血行動態モニタリングにより得られた情報をもとに、②現在の循環の状態を解釈・評価し、③とるべき対応(輸液・輸血あるいは利尿による容量調節、強心薬・血管収縮薬・血管拡張薬の使用、など)を決定し、④それを実行する、⑤それによって生じる変化を血行動態モニタリングによってとらえ、新たなループの始まりとする。この一連のループを繰り返すことで、患者の状態をより良いものとし、安定化させることが循環管理の目標である。
 循環管理を行う上で最初の一歩となる血行動態モニタリングには、様々なデバイス・指標が用いられ、また改良が重ねられてきた。古典的には、心拍数や血圧といったいわゆるバイタルサインが用いられたが、現代の先進的な医療を行うに際して、それらの情報だけでは不十分なことは明らかである。現在では血行動態をより詳細に把握するために、RUSH Examに代表される超音波検査が用いられる。しかし、超音波検査は得られる情報が施行者の技量に依存することや連続的モニタリングするには適さないことから、研修医や看護スタッフを含む医療者全員がリアルタイムで情報を得るには限界がある。
 フロートラックセンサー(FloTrac™, Edwards)は、直接動脈圧測定用カテーテルに接続することで心拍1拍ごとの動脈圧波形を解析し、心拍出量をはじめとする循環パラメータを連続測定する血行動態モニタリングツールである。さらに、測定された一回拍出量をもとに一回拍出量変動(SVV)を自動計算するが、SVVは輸液反応性の指標として有用であることが知られている。それらの指標は専用モニター(EV1000™、Vigileo™またはHemoSphere™)に数値として表示可能である。これにより上述の循環管理のループの第一段階を「見える化」することができ、一人の重症患者に関わるすべての医療者がリアルタイムで循環に関する情報を共有することができる。専用モニターにはそれら数値情報の変化をトレンドとして表示させることも可能であり、循環管理として上記のループを繰り返し行うことによって得られる血行動態の改善・安定化あるいは増悪を「見える化」することも可能である。
 本講演では、フロートラックセンサーを用いた血行動態モニタリングによる循環の「見える化」について、自施設の現況も含めて紹介する。