[O1-2] 術後ICUに入室した患者と直接病棟へ帰った患者の術後認知機能障害発症に関する検討
術後ICUに入室した患者(Group A(n=75))と直接病棟へ帰った患者(Group B(n=75))の術後認知機能障害(POCD)の発症について調査した。腹部手術を受ける70-85歳の患者150人を対象にした。すべての患者は術前、後にかなひろいテスト, 三宅式記名力検査、Trail making test、Mini Menntal State test(MMS)の認知機能検査が行われた。また、術前の動脈血ガス分析(PaO2)と術後の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、VASを用いた術後痛の調査、術後の不穏状態の調査を行った。術後のSpO2は5時間おきに記録された。1週間後に認知機障害を呈した患者はGroup A で8人(11%)、Group B で21人(28%)、3週間後に知機能障害を呈した患者はGroup A で4人(5%)、Group B で5人(8%)であった。1週間後のPOCDを起こした患者はGroup Bで有意に高かったが、3週間後のPOCDの頻度に有意な差はなかった。術前PaO2に有意な差はなかった(69.1 ±5.7 vs 68.0 ±6.3)。Group A,Bでの術後SpO2は10時間後(94.8 ± 0.4 vs 87.0 ± 0.6)、20時間後 (95.3±0.4 vs 87.6 ± 0.6)で有意差が見られた。術後3日間の不穏状態の発生頻度はGroup A で20人(27%)、Group B で9人(12%)だった。今回の研究から、術後早期の認知機能障害は脳内の酸素分圧の低下が関与している可能性があると思われた。術後SpO2の低下は多くの場合、酸素マスクを外している場合が多かった。また。術後早期の不穏の発症とPOCDの関連性は見られなかった。POCDを起こしやすい高齢者に対する酸素投与の徹底した管理がPOCDの低下に関係する可能性があると思われた。なお、本研究は関連する利益相反事項はない。