第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O10] 一般演題・口演10
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:重光 胤明(大阪市立総合医療センター 救命救急センター/集中治療センター)

[O10-1] 血管輪を背景に持つ患者に発症したStanford B急性大動脈解離における気道管理

前川 真基 (国立循環器病研究センター 麻酔科)

【背景】血管輪は大動脈および動脈管索が気道食道を取り囲むことで狭窄をきたしうる疾患である。今回血管輪を背景に持つ患者にStanford B急性大動脈解離が発症し、気道狭窄が顕在化した症例の気道管理を経験したため報告する。
【症例】50代男性、突然の背部痛で救急搬送され、精査の結果Stanford B急性大動脈解離と診断され、同時にright arch, aberrant left subclavian artery, vascular ringを指摘された。自然気道での保存的降圧管理のみで一時退院となった。しかし、発症後1か月で呼吸困難・意識障害のため再搬送となり、鎮静挿管管理となった。CTにより気管下部と右主気管支に狭窄を認め、通常の挿管チューブでは気道内圧高値のため換気不良であったが、挿管チューブを左用ダブルルーメンチューブに交換し気道内圧高値は改善した。その後左肺より肺胞出血を認めるようになったため右用ダブルルーメンチューブに入れ替えた上で手術の方針となった。
血管輪は重複大動脈弓(完全型血管輪)や、右大動脈弓および左動脈管索(不完全型血管輪)により気管食道を取り囲むことで狭窄をきたす疾患である。本症例は不完全型血管輪であり、成人でも無症状なことも多い疾患だが、Stanford B大動脈解離発症により気道狭窄が一気に顕在化した珍しい臨床経過である。当初は集中治療部における管理のしやすさから右肺換気をある程度犠牲にして左用のダブルルーメンチューブによる左肺優位の換気を行っていたが、左肺出血合併により右肺優位の換気に切り替えざるをえないと考えられ、右用ダブルルーメンチューブに交換を要した。
【結語】血管輪を背景に持つ患者に発症したStanford B大動脈解離により気道狭窄が顕在化した症例の気道管理を経験した。気道管理においては物理的狭窄および病態に合わせて臨機応変な対応が求められる。