[O10-2] 当院における呼吸不全症例に対するIPVの使用経験
【背景】慢性呼吸不全や肺癌術後など低肺機能を呈する症例は気道分泌物の管理に難渋することがあり、不可逆性・進行性の慢性呼吸器疾患患者に対しては人工呼吸療法の適応に関して困難な選択を迫られることがある。肺内パカッションベンチレーター(IPV)は高頻度パーカッション流(60-400回/分)とエアロゾル効果により、高頻度陽圧換気療法、ネブライザー療法、パーカッション療法を同時に行う事ができる人工呼吸器であり、嚢胞線維症をはじめとした様々な疾患において、気道分泌物クリアランスの改善効果が報告されている。今回我々は気道分泌物管理を目的としてIPVを使用した呼吸不全症例について検討を行った。【方法】2017年7月から2018年9月に当院においてIPVによる気道管理を行った呼吸不全症例21例について後方視的に検討を行った。【結果】平均年齢は77.5±9.4歳、男性17名(81.0%)であった。基礎疾患はCOPDが6名、気管支拡張症が6名、肺癌術後が3名、肺炎が3名、その他が5名であった。21例中9例は入院時に低酸素血症や高炭酸ガス血症の増悪を認めていたためにHFNCを併用した。平均使用日数は14.9±7.3日であった。2例は誤嚥性肺炎や敗血症などの基礎疾患の増悪により死亡退院となったが、その他のすべての症例は喀痰排出や呼吸パターンの改善を認め人工呼吸管理を回避でき、軽快退院・転院となった。HFNCとの併用症例では換気の改善をもたらす例も認められた。【結語】気道分泌物増加を伴う呼吸不全症例に対し、IPVは非侵襲的で効果的な気道浄化をもたらす可能性がある。HFNCとIPVの併用についても効果がある可能性があるが、今後も症例の蓄積と検討が必要である。