第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 症例

[O10] 一般演題・口演10
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:重光 胤明(大阪市立総合医療センター 救命救急センター/集中治療センター)

[O10-6] 3日間の気管挿管によって、声門下肉芽腫と喉頭浮腫が生じた症例

四宮 沙理, 西田 朋代, 赤嶺 智教, 奥谷 龍 (大阪市立総合医療センター 麻酔科・ICU)

【背景】肉芽腫形成は気管挿管の合併症の1つとして挙げられ、誘因として太いチューブサイズ、高すぎるカフ圧、長期挿管、体位などの圧負荷によるものや、挿管・抜管時やチューブの擦れやカフ上吸引による直接損傷などがある。症状出現までの時間として最短で抜管直後に、また数か月後に遅発性発症した報告もある。今回我々は、比較的短期間の気管挿管にも関わらず、声門下肉芽腫により気管切開となった症例を経験したため報告する。【症例】18歳女性。成人T細胞性白血病の既往あり。剣道の試合中に後方へ転倒し、外傷性環軸椎亜脱臼による頚髄損傷で当センターへ救急搬送された。救急外来にて容易に気管挿管施行後(カフ上吸引付き気管チューブ内径7.5mm、右口角21cm固定、カフ圧25cmH2O)、ICUにてRASS-1~-2を目標とした鎮静下(プロポフォール、デクスメデトミジン、フェンタニル)で人工呼吸管理が開始された。第3病日に頚椎後方固定術が行われたが、その際にチューブ交換は行わなかった。術中・術後ともに大きな問題はなく、術翌日に抜管。呼吸状態は安定しており第5病日には一般病棟に転棟となったが、第22病日頃より嚥下時痛と前頚部痛、軽度の嗄声が出現していた。耳鼻科による診察で咽頭喉頭に明らかな発赤はなく、含嗽薬で経過観察とし、第31病日にリハビリ目的に転院。しかし第33病日より呼吸困難が増悪し、前医でのファイバー検査で喉頭浮腫と声帯下の肉芽腫が発見され、再度当センターに搬送された。ヒドロコルチゾン静注を行ったが呼吸困難の症状に改善なく、第37病日に気管切開術を施行。生検も行ったところ、炎症性肉芽腫であった。ステロイドの創部皮下注を行ったところ徐々に肉芽腫は縮小が認められ、経過良好で第73病日に退院し、外来でフォローする方針となった。【考察・結論】気管挿管に伴う嗄声の頻度は32-67%と高い値が報告されているが、多くは48-72時間に消失する。気管内肉芽腫は女性に多く発生率は0.03-3.5%と少ないものの、急速に進行することもあるため、嗄声などの症状改善がない場合は繰り返しの検査も必要である。本症例の原因としては、腹臥位手術の体位変換やカフ上吸引などの様々な刺激が蓄積したものと考えられた。カフ上吸引は間欠的であったが、適切なデバイス管理や短期間の気管挿管であったとしても、術後の嗄声などが遷延する場合は肉芽腫を含め重大な合併症が存在する可能性を考慮する必要があった。