第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

補助循環 症例

[O100] 一般演題・口演100
補助循環 症例04

Sat. Mar 2, 2019 5:50 PM - 6:30 PM 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:杉田 学(順天堂大学医学部附属練馬病院救急・集中治療科)

[O100-1] 大動脈弁置換術後弁周囲逆流に対してECMOの導入判断に難渋した1症例

小笠原 順子1, 後藤 武1, 三浦 眞昌1, 霜野 朱里1, 大平 朋幸1, 橋場 英二2 (1.弘前大学医学部附属病院 臨床工学部, 2.弘前大学医学部附属病院 集中治療部)

背景大動脈弁置換術後に弁周囲逆流(以下PVL)を認め、循環不全を呈した症例に対してV-A ECMO(以下ECMO)導入を検討したが、術後出血や左心の後負荷の増加を考慮し導入判断に難渋した症例を経験したので報告する。臨床経過77歳の女性、BSA 1.48 m2、EF 71.5 %。重度大動脈弁狭窄症と診断され、大動脈弁置換術と弁輪拡大術(Nick法)を施行した。手術時間405分、心肺時間234分、大動脈遮断時間192分であった。心肺中、遮断時間が長時間であったこと、心筋保護液を右冠動脈注入の際に難渋したことがあり、心肺離脱時のTEEではPVLを認めたが、少量のため再置換の適応なしと判断し人工心肺は離脱した。離脱後、体外式ペースメーカー(以下PM)の心房ペーシング不全から一時循環虚脱となり、TEEでは右心系の拡大を認めたが、左室機能は良好であったことから、カテコラミン増量と心室ペーシングに変更し、循環は安定したため、PMのみの機械的補助で手術は終了した。しかし、ICU入室後、低血圧(60/30 mmHg)、CVP上昇(15 mmHg以上)、Cl 1.7 L/min/m2の低心拍出量症候群を呈した。循環動態も不安定であることからECMOの導入を検討したが、幸い左心機能は維持しており、術後出血の助長やPVLの後負荷上昇による左心不全の増悪を考慮し、ECMO導入には至らなかった。また、PVLに対して再評価するも再手術は外科的適応ではないと判断し、カテコラミン増量とPM調節による心拍出量増加ならびに腎代替療法導入にて循環動態の改善に期待した。しかしながら、ICU入室3日目に血圧低下と不整脈出現から循環虚脱を認めECMOの緊急導入となった。ECMO導入後は低補助流量であるPI 1.0 L/min/m2としたが、灌流圧低下が持続したことから灌流量増加を余儀なくされPI 1.8 L/min/m2まで灌流量を上昇させたが、状態は改善することなくICU入室4日目に永眠した。結論ECMOの早期導入も考慮したが、術後出血の助長やPVLの後負荷上昇による増悪を懸念し導入に至らなかった。しかし、回顧的に検討すると本症例では左心機能は保たれていたことから、PVLがあったとしても逆流した血液を左室から拍出可能な心機能であったと考えられ、全身の臓器保護ならびに冠灌流を増加させる目的でも早期の導入が必要であったと考える。