[O100-5] VA-ECMOとIMPELLAの併用による循環補助を要した心原性ショックの2症例
【背景】心原性ショックは急速に進行する致死的な病態であり、生存率50%前後の現状を過去20年間に渡り打破することができていない。近年新たな循環補助装置としてIMPELLA補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)が登場し、特に最重症例においてはIMPELLAとveno arterial extracorporeal membrane oxygenation (VA-ECMO)の併用 (ECPELLA) により、高流量の循環補助と心筋酸素需要の抑制を両立することで、救命率の向上が期待されている。【目的】心原性ショックに対してECPELLAによる循環補助を行い、血行動態を観察し得た症例の経験を基に、導入及び管理について検討する。【臨床経過】症例1は70歳男性、発症後1時間で搬入された左主幹部の急性心筋梗塞で、経皮的血行再建術(PCI)施行直前に心肺停止となりVA-ECMOを駆動した。PCIと並行してIMPELLA2.5を導入したが、当初IMPELLA流量が確保できず、第2病日以降VA-ECMOの流量を漸減しIMPELLA流量の変化を観察した。第8病日よりIMPELLA流量の漸増が可能となりVA-ECMO流量を漸減したが、第11病日に心内圧の著明な上昇を来し離脱困難と判断した。体外式左室補助デバイスへの移行を検討したが、神経学的評価にて不可逆的全脳機能障害を認めたため断念し、第19病日に永眠された。症例2は70歳男性、亜急性発症の呼吸困難感と胸痛を主訴に受診し、冠動脈造影検査にて左右冠動脈に有意狭窄を認めず、左室収縮能(EF) 25%の低左心機能及び臓器障害を伴う低心拍出症候群に対して、IMPELLA2.5を導入した。しかし循環不全が持続したため、第2病日にVA-ECMOを導入したところ循環不全が解消された。心筋生検にてリンパ球性心筋炎の診断へと至り、保存的加療を継続した。第5病日より心機能が改善傾向となり第7病日にVA-ECMOより離脱、第10病日にIMPELLAから離脱した。その後EFは55%まで改善し、第52病日に歩行退院となった。【結論】IMPELLAの登場により心原性ショックの予後改善が期待される一方、依然としてVA-ECMOを要する病態も存在している。ECMO単独補助の限界が示されている現状における新たな循環補助療法として、ECPELLAの治療効果と適切な管理法の検討が今後の課題である。2症例の経験により導出された、ECPELLAの導入及び管理における留意事項を経過と共に考察する。